【このエディションフェアがすごい!05】りーぶる金海堂クロスモール店(宮崎市)

2021/06/06(日)15:00
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 ジュンク堂書店福岡店、りーぶる金海堂クロスモール店、ブックセンタークエスト小倉本店、喜久屋書店小倉本店。6月1日、九州の4つの書店で同時多発的に「千夜千冊エディション20 冊突破記念フェア」が始まりました。東京でもジュンク堂書店池袋本店が同日スタート。このうち、今回取り上げるのは宮崎県宮崎市にあるりーぶる金海堂クロスモール店です。フェア開催期間は6月1日(火)から6月30日(水)まで。金海堂を贔屓にしているイシス編集学校の佐土原太志師範代が取材レポートを届けてくれました。

 

 佐土原太志師範代といえば、つい先日明かされたクロニクルに加えて、ほぼ一年前の井ノ上シーザーによるエディスト記事「45[守]師範代 佐土原太志が起こした集団絶句」が思いおこされます。

 

りーぶる金海堂クロスモール店。2010年に宮崎市に合併した清武町、蛇行する清武川の岸のショッピングセンタークロスモール清武にある書店。2020年11月に10周年を迎えた。対岸の高台には深く鋭く書物を読み解いた江戸時代の儒学者・安井息軒の旧宅がある。

 

広い店内に趣味・実用書・雑誌・ビジネス書・コミック、参考書や文庫、文具などを取り揃える。

 

ビジネス書ランキングコーナーに斬り込むかのような「千夜千冊エディション」フェアのブース。特大ポスターと通路にせり出しているポップが目を引く。

 

クロスモール店の店長・西田康成さん(56歳)。クロスモール店のオープンから店長を務め、書店員歴25年を超える。高千穂町のご実家も書店だった。

 

 佐土原さんがフェアの相談をした時、西田店長は「松岡さんの言う“編集”ってどういう意味なんですか?」と「編集工学」にも興味津々な様子だったそうです。「本を書く著者が”編集”しているというのはもちろんですが、本を読む読者も編集しているんですよ」と読書を例示に持ちだしたり、「遊んでいるときも、人と話している時も、何かの具合でうまくいかない時も、自分の中ですでに編集が動いていると考える見方です」など西田店長の”注意のカーソル”を探りながら、佐土原さんは「編集とは何か」を暗示的に説明しました。

(注釈)松岡正剛『多読術』(ちくまプリマー新書)や『知の編集術』(講談社現代新書)を読むと、読書や日常生活と「編集」の関係をより詳しく知ることができます。

 

 「カッコいい方ですね。凄みが効いている、任侠の親分みたいだな。いやはや、“知祭り”とは過激だなぁ」とポスターを見ながら西田店長は松岡正剛の“らしさ”に着目してその魅力を語ってくれました。

 

 フェアの初日、佐土原さんがお店を訪ねると、「出来てますよ」と即座に西田店長。数日前には売れ筋のビジネス系のマンガが並んでいたコーナーがフェアの棚に様変わりしていました。真ん中には校長のド迫力の大判のポスター。けれども実は、もともと棚に飾るはずだったポスターとは別のものが使われていました。

 

 「あれ、出版社からポスターとポップ届いていませんか」と尋ねると、「別のポスターのデータがあったのでそれを出力しました。“親分”の仕事の凄みを伝えるにはこの位の迫力が必要でしょう。店員も驚いていましたけど」。ポスターが予定通りに届かないというアクシデントを愉快に逆手にとり、それがはからずも金海堂独自の棚の演出に転換したというわけです。

 

 「これが西田店長の編集なんですね」と唸る佐土原さん。「ま、そういうことになるかな」と西田店長は照れ笑いして、「やっぱりキーブックはこれだよね」と『編集力』を手に取り写真撮影に笑顔で応じてくださいました。さらに「売れる、売れないではなくて、これだけの仕事をしている人だからお客さんを驚かせて、ここで立ち止まらせたい。そして手に取って欲しい」とフェアへの意気込みを力強く語ってくれました。

 

 今回のフェアを機にクロスモール店に足を運んで、“らしさ”も“不足”も活かす編集書店員、西田店長にぜひ会ってもらいたいです。
 フェアの期間中、「千夜千冊エディション」をお買い求めいただくと、購入者特典として2020年にオンラインで限定配信された伝説の講演会「千夜千冊の秘密」(丸善創業150周年記念イベント)の映像が観ることできます。

 

写真・キャプション:佐土原太志

 

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  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。