マンガに限った話ではないが、「バカ」をめでる文化というものがある。
猪突猛進型の「バカ」が暴走するマンガといえば、この作品。市川マサ「バカビリーバー」。とにかく、あまりにもバカすぎて爽快。
https://yanmaga.jp/comics/
藁に縋らず、名に肖る。
錬成はクライマックスへ。入伝生にとっては胸付き八丁にさしかかり、最も苦しい場面だ。方法的に回答を評価するということ、学衆の可能性を開く指南を書くということ、その匙加減に身悶える。師範の言葉にどう応じてよいかもわからず迷子になることさえある。そんな彼らの稽古を支えてくれる一つに、自分で名づけた仮想教室名がある。正式に師範代になる者には松岡正剛校長から唯一無二の教室名を授けられるが、花伝所の演習段階では、自分で考えた仮の教室名をつけて、本番さながらにお題や指南をラウンジに届ける。これまで、その教室名が日の目を見る機会はなかったが、入伝生なりに松岡校長を擬きながらネーミング編集を駆使した賜物をはじめて公開することにした。どんな未来の師範代が集まっているのか、教室名から想像を広げてみて欲しい。
◆◇◆
ふんわりあじわい教室
★ほわああ。こんなお菓子があったら食べたくなります。
てんどん花火教室
★パチパチと何度でも打ち上がる花火が天を彩るのでしょう。
ラーメン三国志教室
★国道沿いに暖簾が連なり、いつの間に全国制覇か。
ビオロジカル教室
★シュッとしてるけど極めて生命を感じます。
トラ柄一番星教室
★やられた。トラ柄はいて宇宙旅行しかない。
群棲アイリス教室
★花でありカメラの絞りであり。どちらも光が決め手です。
されど・17音教室
★定型があるから自由になれる。小津夜景を思い出しました。
ファンキーフラミンゴ教室
★頭の中はワイルド・チェリー。水辺でステップを踏みたくなります。
パリピーオヤジ教室
★ひと目見て笑った。パーティーは眠らない!?
シャッターガラガラピッシャン教室
★閉じたのか開いたのか。シャッターの向こうは異界でしょうか。
風船まくら教室
★寝ても覚めてもふわり夢心地になれそうです。
カラクリ魔森教室
★グリム童話にも出てきそうな森にいつの間にか迷い込んだ。
年中半袖教室
★わんぱくな子供たちはいつでも半袖です。
里山の傍のBBQ教室
★持ち込み歓迎。仲間と意気投合できる秘密基地だ。
異取覚投教室
★最強の知のアスリートがここに集結か。
金継ぎ愚連教室
★欠けたもの同士が集まるとあやしい事が生まれます。
とどろけじ~ん教室
★不思議な響きは遺伝子の多様化の前ぶれか。
逸脱・冒険許可教室
★先に許可を出されたら、もうどこまでも遊ぶしかない。
瀬戸内ほおばりこぼれる教室
★ジュワッ。お腹が空いたらこのトポスに戻るのが一番だ。
めくるめく頁教室
★瞬きするのも惜しいくらい次が早く読みたくなる。
◆◇◆
ユニークで工夫を凝らした名前に顔がほころんでしまう。「群棲アイリス教室」の擬き師範代は、教室名の種明かしをしていて、ドゥルーズが語った「リゾーム」や千夜千冊によく登場する「アジール」に通じるものもこの名に込めていたようだ。
タイトルやネーミングには「いわれ」と「あやかり」の魔力があって、それがないと子供も育たないということが書いてある。まさに、そうですね。育たないだけでなく愛着も出ない。たとえばミモザとか月見草という花の名前はそのネーミングがないと「よすが」も出ない。
2007/05/14 松岡正剛【校長室方庵】より
私が入伝生の頃に付けた仮の教室名は「8ミリぽっぷこーん教室」だった。懐かしいような恥ずかしいような名前だが、清水伺名子錬成師範に「こんがりと香ばしいポップコーンを何度も食べたくなる」と指南のモードを評されて、錬成でささくれだった心が癒されたことが思い返される。「名」とは不思議と愛着がわくし、力をもらうのだ。ちなみに、松岡校長からもらったホントの教室名は「影感モンタージュ教室」。私には不似合いな程、あやしくて、お洒落でかっこいい。ただ、実際の教室では想定外に教室名がギャグっぽく学衆にイジられたり、言い替えられたりして、これが教室に変化を起こし続けてくれた。校長は絶妙に学衆の遊び心をくすぐるスパイスを「名」に潜ませる名人なのだ。
入伝生はホントの本番に向け、今は仮想教室名に肖って跳躍をつづける。
文 林朝恵
アイキャッチ 阿久津健
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38[花]膜が開く。四色の道場
松岡校長メッセージ「イシスが『稽古』である理由」【38[花]入伝式】
イシス編集学校 [花伝]チーム
編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。
「乱世こそ花伝所」。松岡正剛校長の言葉を引用し、花目付の林朝恵が熱く口火をきる。44[花]の問答条々、式目の編集工学講義は花伝所をけん引するツインターボ、林・平野の両花目付のクロストーク形式で行われた。2025年10月2 […]
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【書評】『アナーキスト人類学のための断章』×4× REVIEWS 花伝所 Special
松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を数名で分割し、それぞれで読み解くシリーズです。今回は、9月に行われ […]
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コメント
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2025-11-27
マンガに限った話ではないが、「バカ」をめでる文化というものがある。
猪突猛進型の「バカ」が暴走するマンガといえば、この作品。市川マサ「バカビリーバー」。とにかく、あまりにもバカすぎて爽快。
https://yanmaga.jp/comics/
2025-11-25
道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。