空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。

年が明けてから成人の日まで、世の喧噪を余所に、46[守]は番ボー祭り一色だった。
守の全校アワード「番選ボードレール(番ボー)」は、いわば池に投げ込まれた大きな石だ(しかも次々放り込まれる)。稽古からしばらく遠ざかっていた学衆も、モチベーションを見失いかけていた学衆も、その音に池を覗いてみたくなる。これを「番ボーエフェクト」とジャイアンは名付けている。
その番ボーである。
あれやこれやあって、いろいろ書きたいのだけれど、いちばん嬉しかったことを記そうと思う。
番ボー最終日。ひとりだけ番ボーお題のミメロギアに回答していない学衆がいた。声もしばらく響いていなかった。年末年始の忙しさの中で稽古しているのだ。無理もない。もちろんジャイアンはしつこいので、年が明けてから3度、声をかけた。だが、一向に反応がない。
半ば諦めかけていた前日の深夜、その学衆に向けて、ひとりの学衆からメッセージが発せられた。
そこには「できるなら一度きりのこのコースをみんなで駆け抜けられたらいいなぁ」とあった。考えを押しつけず、学衆の「地」に寄り添って、丁寧に言葉が綴られている。思いが詰まった「小さな手紙」だ。
当日の朝、もうひとりの学衆がそれに続いた。お節介かもしれないと断りつつ、「元気な声を聴きたい」と呼びかけた。
誰が何といおうと、わが角道ジャイアン教室の番ボー最大のクライマックスは、ここだ。
深夜と早朝に教室に投げ込まれた小石。
ジャイアンはたしかにその音を聞いた。
多分このあと、その音を何度も思い出すだろう。
前回の番ボー祭りを終えた後、ひとりの学衆から、こんな感想が寄せられた。
「個々の作品なのでマラソンかと思いきや、番ボーは駅伝ですね」
たしかに何かを手渡し合っている。それぞれの作品に刺激を受け合っているのだから。そして自分が走っていない時は、仲間に声援を送る。
第2回番ボー駅伝の結果をお伝えしようと思う。
第一走者のマッハペンギンは、ペースを崩さずコンスタントに回答を重ねた。回答は7回。総作成数は200を超えた。
第二走者の切り込み隊長のラリーは10回。教室の最長だ。小気味いい走りは、チームに風を吹き込んだ。
第三走者の彩回答王のオジキは、自身をあしたのジョーになぞらえて、フラフラになるまで走るのをやめなかった。
第四走者はフィルターの使い手。初日にセンスのいい回答を寄せたものの、仕事に忙殺されてしばらく音沙汰なし。だが最終日に猛烈な追い上げて作品を磨き上げた。
第五走者は角道ーズの歌姫。回答は10回でトップタイ。後半の足の運びは、チームの中でも光っていた。
第六走者はウルトラマラソン完走者。今回は最後の最後でひと磨きを加え、その根性を見せつけた。
第七走者は跳びはねる女神。時差のハンデもものともせず、作品の中に自分の世界観をきっちり出してきた。
第八走者は頼れる団長。第1回番ボーからの成長度は、チームでピカイチといっていいだろう。
アンカーは、稽古の鬼。最後の最後に駆け込んで、回答を連打。エントリーもなんとか滑り込んだ。
9人のタスキはつながり、ゴールへとなだれ込んだ。前回に引き続き、9人全員の番ボーエントリーだった。
うねり胴鳴り九重山
年末の第1回汁講をきっかけにして、角道ジャイアン教室に誕生したキャッチフレーズだ。学衆が考え、決めた惹句である。今回はこのキャッチフレーズを胸に、番ボー駅伝に臨んだ。
9人が9人、自分の声を発し、それが九重に重なり、大きなうねりとなった。うねりはそれぞれの力となった。
卒門まで一カ月ちょっと。うねり九重衆、まだまだうねる。
▲早咲きのサクラ・河津桜。さしずめ守学衆に とっての「サクラサク」は卒門だろうか。
ああ、それでもジャイアンは歌う――46[守]新師範代登板記 ♯1
ジャイアン、恋文を請い願う――46[守]新師範代登板記 ♯2
ジャイアンとコップ――46[守]新師範代登板記 ♯3
ジャイアンの教室名 ――46[守]新師範代登板記 ♯4
ジャイアンは教室とともに――46[守]新師範代登板記 ♯5
ジャイアンの1週間――46[守]新師範代登板記 ♯6
ジャイアン、祭の後――46[守]新師範代登板記 ♯7
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama
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