ジャイアンの1週間――46[守]新師範代登板記 ♯6

2020/11/27(金)10:26
img CASTedit

 

 師範代としてのジャイアンには、常に「○○節」という評価がついて回る。キャラが立っているといえば聞こえがいいが、ようはモードの幅がないということではないか。
 ムムム。いきなりフーテンの寅モードを持ち込むわけにはいかないので、ライバルに肖って日記調でこの1週間を振り返ってみたい。7日連続のジャイアンリサイタルを覚悟されよ。


11月19日(木)
 朝6時に猫に餌をやり、子供たちを学校へ送り出し、NHK朝の連ドラをBSで見てから、仕事に取りかかる前に指南。これが最近のリズムだ。指南の勢いで仕事の原稿を1本片付ける。
 続いて遊刊エディスト。さてどうするか。意外とアケフセが難しい。推敲を重ね、どうにか目鼻が立ったところでイラスト&写真を作成。ここまでやらんでもと思うが、やるからには尽くさねば。
[教室での学衆の声3/ジャイアンの声3/遊刊エディスト1/原稿2、雑事たくさん]


11月20日(金)
 朝5時、猫に起こされる。スマホをチェックすると遅れ気味だった学衆から回答が届いている。思わず声が出る。声をなかなか挙げない学衆も、教室の近くにいるのだ。いつでも入ってこられるように、常に扉は開けておかなければ。猫をなだめつつ即見指南を返し、学衆の背中にそっと手を置く。
 指南を1本終え、銀座へ。雑事や打ち合わせを片付け帰宅。夜は、勧学会に空文字アワーを促す檄文を1本。空文字を煽り、来たる番ボーを煽り。角道ジャイアン教室の面々は日々こうしてジャイアンのダミ声を聞かされる羽目に陥っている。ハハハハハ……。
[学衆の声5/ジャイアンの声8/打ち合わせ2、雑事たくさん]


11月21日(土)
 土曜の午前中はイシスの時間だ。休日にある程度指南を返していかないとあとがキツくなる。やはり教室のリズムを作るのは指南だ。指南の声は教室の基調音であり、指南こそ教室における最高のメディアである。
 回答には最近、教室の仲間への言及が増えてきた。学衆同士の関係線が引かれてきたことが何よりも嬉しい。仲間への興味は、共読に繋がる。
 指南がひと息ついたところで、遊刊エディストの「ジャイアン人物伝」を仕上げる。
 午後は車で妻と買い物へ。一説によると夫婦の幸福度と会話量は比例するらしい。逆にいえば会話時間さえ確保していれば無理が利く。夕飯を作り後片付けをし、ポイントをたんまり稼いだところで自部屋へ。番ボーの戦略を練りつつ指南。
[学衆の声3/ジャイアンの声5/遊刊エディスト1]


11月22日(日)
 朝から即見指南を繰り返し、番ボーへ向けてトントントンっと背中を押す。指南の合間にスマイラー師範と番ボーの打ち合わせ。
 用法1も終わりに差し掛かると、学衆のエディティングモデルがおぼろげながら見えてくる。それを「地」にして言葉を拾っていく。注意のカーソルの感度を上げて、回答の中の突起、違和感を探し出すのだ。同じ言葉でも「地」が異なれば意味は変わる。書かれていること(回答)がすべてだが、言葉に惑わされてもいけない。
 指南で見るポイントは3つだ。困っていないか。楽しんでいるか。向き合っているか。困っていたら駆けつけ、楽しんでいたら「こうしたらもっと楽しいよ」と冒険を促し、向き合っているなら「イイネ!」と賞賛する。指南で教えることなど何一つない。師範代は、回答から型を取りだしているに過ぎない。むしろ師範代が、型の可能性と多様性を指南を通じて学んでいる。誤解を恐れずにいえば、守とは「師範代を稽古する場」なのだろう。
 今日は15日から続けてきた「空文字アワー」の最終日でもあった。始まる前からほのめかし、勧学会で煽り、火をつけ続けた。全員参加でなかったのは残念だが、書き込み回数はのべ41回。総文字数は460字を超えた。この勢いを番ボーに繋げられれば。
[学衆の声3/ジャイアンの声6/原稿1]


11月23日(月)
 午後からは番ボーの回答も届き始めた。
 番ボーでは、学衆のエントリー作品が講評される。これを嫌がる学衆もいるだろう。だが評価されるのは、実は師範代自身だ。師範代がどう指南したかが問われるのだから。
 意を決してアザラシ師範代直伝の吹きおろし指南を試みる。もちろん、打てば響くとの確信あってのことだが、さて。
[学衆の声7/ジャイアンの声7/原稿1]


11月24日(火)
 今朝は同期師範代の勧学会コンテンツ「ハタンのつぶやき」を真似て「ジャイアンVOICE」を投下。少なくとも番ボー期間中は朝イチの声&ヒントを届けることにしよう。
 吹きおろし指南に彩回答が続々と届く。回答が1回めより粒だってきたことが手に取るようにわかる。早速、彩指南。ラリーが続くことを祈る。
[学衆の声10/ジャイアンの声9/原稿1、雑事たくさん]


11月25日(水)
 番ボーでの字書・辞書の使用を促すために、勧学会で実際に辞書を引いてみせる。『字訓』や『字統』は敢えて避け、学衆が持っていないであろう『日本国語大辞典』と『全文全訳古語辞典』から引用して例示。するとそれを参考にトライしてみたという彩々回答が届く。大丈夫、声は届いている。
 番ボーのフィニッシュは29日22時だ。まだ時間はある。まだラリーは出来る。わがジャイアンチームの「さしかかり」を願う。
[学衆の声6/ジャイアンの声8/ZOOM取材1、原稿1]

 

(2020.11.27)

 

 

▲ジャイアン師範代が登板に備えて買い集めた辞書群。プラス「ジャパンナレッジ」を携え回答&番ボーと相対す。

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

  • スコアの1989年――43[花]式目談義

    世の中はスコアに溢れている。  小学校に入れば「通知表」という名のスコアを渡される。スポーツも遊びもスコアがつきものだ。勤務評定もスコアなら、楽譜もスコア。健康診断記録や会議の発言録もスコアといえる。私たちのスマホやP […]

  • フィードバックの螺旋運動――43[花]の問い

    スイッチは押せばいい。誰もがわかっている真理だが、得てして内なるスイッチを探し出すのは難しい。結局、見当違いのところを押し続け、いたずらに時が流れる。  4月20日の43期[花伝所]ガイダンスは、いわば、入伝生たちへの […]

  • 【多読アレゴリア:勝手にアカデミア】勝手に映画だ! 清順だ!

    この春は、だんぜん映画です!  当クラブ「勝手にアカデミア」はイシス編集学校のアーキタイプである「鎌倉アカデミア」を【多読アレゴリア24冬】で学んで来ましたが、3月3日から始まるシーズン【25春】では、勝手に「映画」に […]

  • 【多読アレゴリア:勝手にアカデミア③】2030年の鎌倉ガイドブックを創るのだ!

    [守]では38のお題を回答した。[破]では創文した。[物語講座]では物語を紡いだ。では、[多読アレゴリア]ではいったい何をするのか。  他のクラブのことはいざ知らず、【勝手にアカデミア】では、はとさぶ連衆(読衆の通称) […]

  • 【多読アレゴリア:勝手にアカデミア②】文化を遊ぶ、トポスに遊ぶ

    「鎌倉アカデミア」は、イシス編集学校のアーキタイプである。  大塚宏(ロール名:せん師)、原田祥子(同:お勝手)、角山祥道(同:み勝手)の3人は、12月2日に開講する【勝手にアカデミア】の準備を夜な夜な進めながら、その […]

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。