【このエディションフェアがすごい!17】ジュンク堂書店 大分店

2021/07/03(土)13:05
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 「このエディションフェアがすごい!」シリーズ、第17弾は大分市のジュンク堂書店大分店。ライターはイシス編集学校師範代で九天玄氣組の田中さつきさんです。

 

◇◇◇

 

1995年に開店したジュンク堂書店大分店は、入居ビルの建て替えにより2017年に閉店することになりました。大分市は人口約48万人の県内首位都市です。大型書店が無くなることを危惧した市民の要望に応えて、僅か2か月後には中央商店街にある近くのビルにて再オープンしたのです。

 

中央町商店街は大分駅前から、官庁街へ続く大分市きっての歓楽街。2本の通りが交差する中央は開閉式ドームになっています。地元出身の磯崎新氏設計の建築物や朝倉文雄氏の彫刻も点在している大分市。アートイベントも多く、アーケードを広げて大分県立美術館まで屋根付き通路で結び、雨に濡れることなく通行できる計画もあるそうです。

 

アーケード街に面したエントランスは立ち寄りやすく、フロアー面積はさほど広くないのですが、5階までが売り場になっています。

 

目に付きやすい3階エスカレーター前では、8棚でジャンルを超えた様々な特集が組まれます。この中央に千夜千冊エディションが並びました。左に教育書、右にビジネス書といったランダムな棚づくりによって、関心ある本だけでなく、偶然目にした本との出合いも楽しめるようになっています。

 

 

平常は人文、社会関係の本が置かれている3階に松岡正剛の棚があり、通路にいてもポスターに手招きをされるかのよう。同階の柱ではフェアの案内をしていました。

 

多くの人が手にした形跡があり、特に『仏教の源流』『面影日本』が人気だったそうです。

 

実は全国に先駆けてフェアを展開したのはジュンク堂書店大分店。まもなくフェアは終了しますが、開始は『仏教の源流』が刊行されて間もなく、5月10日だったのです。九州の西部で、2ヶ月間のフェアが堂々開催されてきたのです。終了間際に訪ねました。

フロアー担当はビジネス書から異動したばかりの藤澤美穂さん。笑顔で気さくに対応してくださいました。「この階にはまだ不慣れで、勉強中なのですよ」と語る言葉に素直なお人柄を感じます。エディション棚から取り出したのは、タイトルに惹かれるからと『少年の憂鬱』でした。「フェア棚では『情報の歴史21』が真っ先に売れたのをよく覚えていますよ」と言われて、藤澤さんの誕生年を一緒に見ました。「山口百恵ブームですか、私は彼女がベストテンで一位になった日に生まれたのですよ。すごい本ですね」と、藤澤さんのイチオシでした。

フェア後も千夜千冊エディションは書店に並び、7月末日までお求めの方には特典映像用のQRコードが付いています。

 

大分県北部の中津市耶馬溪在住。職人さんに大工や左官仕事の教えを乞い、古い木造住宅を改修中。発足から参加している九天玄氣組の合宿所になることも。漬物も修行中です。

 

文・写真:田中さつき

 

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  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。