風韻講座 – 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp Sun, 09 Jun 2024 00:57:11 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.1 https://edist.ne.jp/wp-content/uploads/2019/09/cropped-icon-512x512-32x32.png 風韻講座 – 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp 32 32 185116051 編集の方法は連句にあり――小原(濤声)昌之のISIS wave #29 https://edist.ne.jp/cast/isis-wave29_oharamasayuki/ https://edist.ne.jp/cast/isis-wave29_oharamasayuki/#respond Wed, 15 May 2024 22:53:54 +0000 https://edist.ne.jp/?p=71212

イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。

 

イシス編集学校には、九天玄氣組や未知奥連など各地に公認支所があるが、非公認ながら常時20人前後が集う活発な会がある。それが連句の会「UKKARI島」だ。その主宰者・濤声さん――小原昌之さんは、なぜ連句に惹かれたのか。臨床心理士としてどんな可能性を見ているのか。

 

俳聖・松尾芭蕉が『おくのほそ道』へ旅立った5月16日に、小原さんのエッセイをお届けします。

 

■■ネット上に生まれた詩歌の楽園

 

 41[守]の師範代を終え、[遊]17期風韻講座を受講した後、連句魂に火がついた。2020年のことだ。この年にイシス20周年を祝し、20巻の連句作品を皆と巻き上げた。連句は俳句のルーツとなる座の文芸で、俳諧とは連句を指す。芭蕉は俳句の人ではなく、連句の人だったのである。俳句にはない連句の魅力は、前句に自分の句を付けて、世界を転じ、自らも世界に転じられるところだ。連句はやっぱり楽しい。

 

 連句の場を設けるべく、slackというメッセージングアプリを利用して、毎日仲間と連句を巻けるコミュニティスペースを創り、そこをUKKARI島(UKKARI歌仙秘湯会の島)と名付けた。United Kingdom of Kasen Royal Islandの略でもありうっかりに気づき、許しあう場でもある。そして36句を連ねる歌仙を中心とした連句の楽園である。ここには、編集学校の重鎮、至宝、ヘビーユーザー、ライトユーザーまで混ぜ混ぜな連衆が、常時20人前後は集っている。編集の方法のすべてが凝縮されていると言って過言ではない連句の面白さと深さを知り、皆病み付きになっているのである。この島にいると、芭蕉がいう「虚に居て実を行うべし。実に居て虚に遊ぶことは難し」が実感される。虚とはイマジネーションの世界であり、風雅の世界である。そこをもう一歩深めるとズキズキワクワクな風狂の世界にさしかかる。

 

▲普段はネット上でのやりとりだが、年に数回、リアル連句会を開催。これは柴又帝釈天での連句会の記念写真。

 

 私が「型」の力を実感したのは、もう20年も前に、精神科病院に勤務していた時だ。医師とも看護師とも話さず、日中の活動にも出ない患者さんが何人もいる病棟スタッフから何か新たなアプローチはないか相談され、直観的に、句会をやってみようと思った。

 週一回、病棟に出向いて、ホワイトボードに季語のお題をひとつと例句を三句ほど。

 患者さんは皆、俳句を創ってきた。そこで句会をして、座を建立していき、半年も経った頃、話さなかった患者さんが看護師に話すようになったり、診察の場で医師から作った句に言及されると笑顔が見られるようになった。その変化に病棟スタッフは驚いた。またその頃、一対一の外来心理面接の場では、連句をするようになった。イメージの海を言葉の網で漁ができる型の舟を手に入れると、いのちは元気になる。

 

 映画『PERFECT DAYS』(2023年日独/ヴィム・ヴェンダース監督)の主人公が「この世界は、本当は沢山の世界がある。繋がっている世界もあれば、繋がっていない世界もある」と言った。連句は一見別々な句の世界が蓮根の繊維一本でつながるように付けあうことを楽しむ。べったりでもなく、無関係でもなく。余白、余情が豊かな関係である。このような関係が社会でもっともっと増えてくればよいのにと思う。

 私は心理臨床家として、連句のエッセンスを活かしながら、エンカウンターグループやオープンダイアローグ等のグループアプローチで地域のコミュニティ支援をこれからも続けていきたい。芭蕉の遊びに遊びながら。

 

連歌(連句の源流)は、「日本文芸の編集の妙」であり、「今日の(日本の)詩歌やポップソングやラップにつながった」とは、松岡校長の分析ですが、とすれば、連歌には「日本という方法」が詰まっているといえます。濤声さんの病院での体験、現在の連句会の隆盛は、それを物語るものといえましょう。「シンお笑い大惨寺」でも連句会の企画が持ち上がっており、イシス全体を巻き込んだ連句会も夢ではなさそうです。


文・写真/小原(濤声)昌之(38[守]ちょんまげスイミー教室、38[破]カプセルピアス教室)
編集/角山祥道

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未知奥トポスめぐりⅣ 付けて転じるドリーミングー小原昌之師範代の石巻 https://edist.ne.jp/cast/michinoku_topos04/ https://edist.ne.jp/cast/michinoku_topos04/#respond Tue, 20 Apr 2021 01:28:31 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=22741  古代からみちのくの人や物の流れの要であった北上川。それが太平洋につながる街石巻の小さな洋食屋に少年はいた。カウンターで宿題をしていると、父がピザを窯に入れ、母がかわるがわるやってくる常連客を迎える。
 少年は、遊びをつくるのが大好きだった。石巻の街を舞台にして、たとえば鬼ごっこのワールドモデルをドラキュラに翻案し、十字架やにんにくを鍵にルールを決めて、広小路やデパートや路地を駆け巡った。

 遊びをせんとや生まれけむ―少年は長じて、イシス編集学校[遊]風韻講座の韻去者が集うEdit Cafeのラウンジ、半冬氾夏寮の片隅にいつのまにか温泉を掘り当て、湯守として韻去者たちを迎え始めた。
 その温泉は、いくら浸かってものぼせることのない、言葉の泉である。誰もが講座で夢中になった連句の場を温泉に見立て、同年元旦に自らが韻去した第17座胡桃座の連衆と歌仙を巻き始めた。イシス20周年の2020年を言祝ぐ20巻の歌仙を奉納する、というターゲットを掲げて。
 ちょうど新型コロナウィルスの影響が日本で顕在化した4月からは、連衆を全韻去者から募り、2020年を通して寮内で歌仙を興行してきた。巻が改まるごとに、式目に工夫を凝らすことも忘れない。

 そして、2021年元旦、ZOOMで顔を合わせて巻いたオンライン歌仙1巻を含め、21巻を寮に納めた。歌仙秘湯に逗留した韻去衆は、これまでの18座のうち15の座から38名におよぶ。

 湯守は時折フーテンの寅さんのペルソナをかぶって登場し、連衆をつなぎ一座としていった。(本人のおだやかで知的なたたずまいはむしろさくらの夫の博に近いが)

 湯守こと小原昌之師範代の専門は、自身が連句との相似を見出すカウンセリングだ。10歳のころふいに「自分はありとあらゆる心を知ってしまった」と感じた記憶をもつ少年は、思春期を経て「人間のことがよくわかる勉強がしたい」と大学で心理学を専攻した。在学中のアルバイト先の病院で、1983年当時の日本では希少であったカウンセリングの研究所を設立していた大須賀発蔵さんに出会う。
 そして、生涯学んでいきたい志を伝え、卒業後5年間は研究生として籍を置きながら、不登校児の家庭教師や病院の非常勤心理士をして生活費に充てる下積み時代を送る。
 その後、茨城県の心理専門職となり、児童相談所や精神科病院、リハビリテーションセンターなどの臨床現場で勤務し、この3月に定年を迎えた。定年後は大須賀さんの研究所が前身である茨城カウンセリングセンターで副理事長を務めながら、より広くカウンセリングを提供していく予定だ。

 石巻の海岸近くには、商船が出発する前に天候を観察したという日和山がある。
 その山にあった中学・高校で授業を受ける間、小原はいつも海の向こうに浮かぶ網地島を見ていた。日和山に登った松尾芭蕉が、霊場として名高い金華山と間違えた、牡鹿半島の先にある島だ。
 地味な男子校の日々の中で、離島は自由な楽しみの象徴だった。伊達政宗が石巻から出航させた慶長遣欧使節の面影が心に宿っていたのかどうか、「大学生になったらヨットで風力だけを使ってあの島に渡りたい」とずっと思っていた。そして大学3年生の時に、石巻港から6時間かけてそれを実現した。

 

2010年9月の日和山からの眺め


 日常から離れてハレの日をたのしむ場としての離島は、半冬氾夏寮が一旦閉じられてからSlackに移った連句の場にも投影されている。小原は意識していなかったそうだが、その場を「UKKA離島」と名付けた。寮内で歌仙を巻く過程で、まだまだ慣れない連衆たちがみなそれぞれ式目に触れるたびに、「UKKARI」の称号を得ながら受け入れられてきたこととの合成である。

 網地島に上陸した時のことを思い出すと、ひとつながりに想起することがある。夕方浜に上がって、テントを張って迎えた夜、砂の上に寝そべって眺め続けた星空だ。後年東京出身の友人を連れて行った時、人工的な光がなにもない浜で「あまりにも星が多くて気持ち悪い」という感想を聞いた。

 

網地島の浜辺


 その星空を、石巻市街でも見た、と友人に聞いたのだ。小原は鹿児島にいてそれを見ることはできなかった。2011年3月11日の夜のことである。
 茨城に帰れなくなって取ったホテルから、石巻の家族や友人に電話をかけ続けた。やっとつながった友人のひとりから「流された」という言葉を聞いたところで電波が途切れた。「流された?」石巻で生まれ育った土地勘でも、市街地に波が到達するということはにわかには想像ができなかった。
 両親の洋食屋は肩まで水に浸かるも、次第に被災した人々が集まってきて、ピザ窯を囲んで薪をくべ、ぽつぽつとこぼれる言葉を交わす場となっていた。

 一か月後に見た故郷の街は、まるでゴジラが一切のものをなぎ倒しながら通過した跡のようだった。
 小原にとって子供のころから一番怖い夢は津波の夢だった。けれど、幾度も見てきた津波の夢を、東日本大震災後は見ることがなくなった。
 少年のころ、ドラキュラや大脱走などのモードに仕立てて走り回った街、そのトポスを小原はどんな気持ちで見たのだろう。

 「それはね、アボリジニの経験に近いんじゃないかと思うんですよ」。予想外に明るくも聞こえる声で小原は言った。アボリジニは「土地は白人によって奪われた。でも、ドリーミングは奪われていない」と。ドリーミングとは、近代化したわたしたちの概念とはまったく分節化の違う概念だ。
 アボリジニは、ドリームタイムに祖先の活躍によって土地のかたちが決められたと考える。その時、祖先はその土地に固有の潜勢力を忍び込ませたと。
 ドリーミングはドリームタイムに起こったことに近づくためのものだ。時間を超えて、というよりも、時間に関わらず存在する土地そのものに溶け込んでいく。土地だけでなく動物や精霊とも、自分が分かれていない。ドリーミングを生きることができた時に、そのことがわかる。
 小原も、ゴジラが通過しても変わらない、石巻そのものを感じたのだろうか。

 震災の2,3年前から、茨城から帰省した時、夕方の北上川で風に吹かれていると、なんだか石巻に包まれているような気がした。
 小原はゲニウス・ロキの影向をつかまえる。症状の重いクライアントのカウンセリングも多く担当するなか、自分の心身を健やかにしておくことが職業上の責務と感じた40代、その手段として身につけた瞑想の最初の師は、勤務していた県立病院の奥庭の山桜だった。
 遊びをつくることが好きだった少年は、遊の字の意味する「吹き流しのついた旗竿を持つ人」なのかもしれない。その旗には一族の霊が宿っているという。旗を立て、そこに宿るものに感応するのだ。

 流された橋や岸辺に咲く桜
 小原のこの一句は、石巻の中心部で北上川にかかる内海橋を詠んだものだ。この橋は、津波とそれによって流されてきた家屋などに耐えかねて崩壊した。ようやく小原が石巻に帰ることができたのは桜の季節だった。
 この句は、「UKKA離島」で毎月行われている句会で、連衆から3月の天の句に選ばれている。

 連句とカウンセリングの相似律は、まず互恵的であることだ。
 カウンセリングの道具は耳と心と口。言葉はイメージを載せた荷車だという。よく聞いて、そこに載っているものを心で感じ、返す。これは連句の付けである。匂い・移り・響きもカウンセリングで感じる。相手の言葉があればこその場の転じだ。自分の付けもなんらかの形で相手の中に揺らぎを起こしてくれればいい。

 突然秘湯を掘り始めた小原の定年後のテオリアは大きく、プラクシスは速い。連句を用いた新しい一座建立のカウンセリング講座の立ち上げを皮切りに、「令和のカウンセリング俳諧師となって全国の縁ある方々と歌仙を巻く旅をしていけたら幸せ」と語る。膠着した場に風を通して去っていく、寅次郎さながらだ。
 すでに日本連句協会や芭蕉の系譜につらなる猫蓑会の会員になり、俳諧武者修行をはじめている。連句とカウンセリングを一種合成して、新しい方法を生み出すことを目論んで。

 

われわれがいま一番失っているか、もしくは苦手になっていることが少なくとも二つある。ひとつはインスピレーションを受けたり放ったりすること、もうひとつはトポスにこだわってその夢を見ることだ。世の中がエビデンス(証拠)のなすりつけあいになって「ひらめき」が後退し、どこでもいつでもユビキタスになれるため「その場」にこだわれない。
千夜千冊10夜 ルネ・デュボス『内なる神』)

 

 小原は、石巻で茨城で津々浦々で、秘湯で離島で、旗を携え影向を感じ、付けて転じるドリーミングの中にいる。

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【20周年感門】冷めてもおいしい、イーてれ舞台裏へ飛んでQ(後編) https://edist.ne.jp/post/20th_kanmon_etele2/ https://edist.ne.jp/post/20th_kanmon_etele2/#respond Sat, 03 Oct 2020 02:00:53 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=13385
  •  表舞台の数だけ裏側に物語がある。先に行われた20周年感門之盟では本楼や近大、大分・耶馬渓など列島各地にステージが設えられ、綺羅星のごとく多くのスターが登壇した。これだけではない。感門之盟にはもう一つ、オンラインの舞台があった。その裏側でどんなことが起きていたのか。初日(前編)・2日目(後編)に分けて紹介する。


     おはようございます! イーてれ副音声です。
  •  
  •  「イシス編集学校20周年記念感門之盟」2日目です。
     みなさまの門出を、本日も寿いで参りましょう!

     
     初日の興奮が冷めやらないまま、感門之盟2日目がスタートした。
  •  
  •  前日のイーてれ隊から、バトンを受け継いだのはキャスターが山梨&青森&仙台チーム。続いて軽井沢&横浜チーム、島根&山梨チーム、熊本チームの12名だ。それぞれのメンバーがISISフェスタ2020年夏で、ご当地編集のナビゲーターをつとめている。
  •  
  •  <ISISフェスタ2020夏 ツアー詳細>
  • ●なるほど・ザ・編集!それいけポンカン富士山指南祭(山梨)
  • ●秘めてるかるいざわざわ 編集Groovy祭(軽井沢)
  • ●いざ鎌倉! ハマの女神と編集祭(鎌倉&横浜)
  • ●はんなり編集しはっておおきに祭(京都)
  • ●ちょっこし遊んで 出雲神在だんだん編集祭(島根)
  • ●来て見てはいよ!熊本「朝見世」モノヒト語り~地域を「店」に見立てたら?~(熊本)


  • ●ルル3条と編集思考素をかきまぜる

     Q出しは初日同様にLINEを使う。LINEからEditCafe、さらにzoomという、イーてれ隊必携の三位一体のツールをヌケのないよう注意深く見回していく。三間連結の稽古が思い浮かぶのは、ISISの師範・師範代経験者ならではだろうか?
     
  •  Qを出すのは、タイミングと余白のホドが完璧な竹川智子師範だ。




    ●らしさを纏う、キャスターの用意

     今期の感門之盟では、風韻講座の韻去式や、物語講座の過去の名作発表も開催された。韻去の作品集や記念の品を受け取る側にとって、かけがえのない場を絶妙なタイミングで投稿しなければならない。Q出しのシャープな用意に、各キャスターの身が引き締まる。さらに、キャスター各自の「方言」にも編集を加える。オープニングでは溌剌とした山梨弁が登場したかと思えば、しとやかな風韻講座や、現役・OBともに注目の的である「情報の歴史」紹介コーナーでの各地の方言は控えるといった、足し引きを工夫した。


  • ●トラブルもなんのその、リアル編集とチーム力

     キャスターのトップは山梨チーム。当期師範という多忙で多重なロールにも関わらず、疲れを見せない実直な姿が響く宮川大輔師範、迅速で柔らかな対応力が見事な内田文子師範代だ。コーナーや、受賞作品の発表順序が変わるといった突発事項にも柔軟に対応する。

  •  続く軽井沢&横浜チームは、突破式・【破】の出世魚教室名発表を担当。師範代への先達文庫授与を連投する最中に起こったzoomのトラブルも難なくこなす中原洋子師範代。キャスターの直後、別ロールに着替えが待っている大塚宏師範代は、緊張を押しやり、細やかに中原師範代をフォローする。
  •  

     



    •  島根&山梨チームは感門の目玉のひとつ、新師範代の教室名発表を担当。注目が集まるコンテンツだけに、フライングや間延びしたQ出しと投稿は許されない。教室名発表の度に新師範代への激励・祝福メッセージで賑わうチャット。その裏側では黙々と、Q出し→投稿の応酬が繰り返された。
       その後の物販コーナー「ジャパンエディットTERADA」※では、商品カートのURLが開けないという、ヒヤヒヤ感を味わう増岡麻子師範代と、情報に対して即座応対を尽くす内田文子師範代。間際にURLが開きほっと一息。

       グランドフィナーレを飾るのは、熊本チームの植田フサ子評匠。 zoomから人々が立ち去るなか、植田はイーてれラウンジへ
      校長校話の言葉を届ける特別ミッションを担った。

        ―「この秋から来年の春までに編集はかなり注目される」と思っている。―

        ―僕が語ることを組み立てなおしてプレゼンスに向かう人に期待したい。―

       用意と卒意のリアル稽古である、イーてれもチャットもまた、プレゼンスに向かっていく。



      ●感門の裏側、イーてれの裏
    •  
    •  ―幕が下りた後に起きた、イーてれの裏話をもうひとつお届けする。

       島根&山梨チームは、前日まで関西&島根チームとして用意に奔走していた。しかし、関西の阿曽師範代が急な事情でやむなく降板となったため、山梨の内田師範代がピンチヒッターとして再登板。急ごしらえで島根&山梨チームを結成し、内田師範代の華麗でスピーディーな編集力がイーてれラウンジを盛り上げた。

       感門終了後、LINEでチームの健闘をたたえ合うなか、遅ればせながらと駆けつけた阿曽師範代のメッセージに一同が湧きあがる。笑顔と涙がまざりあい、イーてれ隊の感門之盟が仕舞いとなった。


       以上「イーてれ」21日チーム・オールスターキャストでお送りしました。


      みなさま、ありがとうございました!
      またどこかの編集の庭でお会いしましょう♪




      ★★★イーてれ オールスターズ(9月21日)
       
       <イーてれ・Zoomマネージャー> 編集工学研究所 衣笠純子(師範代)

    • <Q出し担当>
    • 竹川智子(師範)

      <山梨&青森&仙台チーム>
      キャスター 宮川大輔(師範)、内田文子(師範代)
      チャット番 井ノ上裕二(師範)・森由佳(師範)

      <軽井沢&横浜チーム>
      キャスター 中原洋子(師範代)、大塚宏(師範代) 
    • チャット番 小川玲子(師範)
       
      <島根&山梨&関西チーム>
      キャスター 増岡麻子(師範代)、内田文子(師範代)、阿曽祐子(師範代)

    チャット番 景山和浩(番匠)

    <熊本チーム> 
    キャスター&チャット番 植田フサ子(評匠)

    イシス編集学校20周年記念 64技法風呂敷
    https://shop.eel.co.jp/products/detail/250

     

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    https://edist.ne.jp/post/20th_kanmon_etele2/feed/ 0 13385
    本楼をおおった折句の星空~風韻講座presents 20周年感門之盟折句企画 https://edist.ne.jp/list/20th_kanmon_oriku/ https://edist.ne.jp/list/20th_kanmon_oriku/#respond Sun, 27 Sep 2020 01:35:33 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=13078  「折句」といえば「かきつばた」を折り込んだこの和歌を思い出す人も多いだろう。

     

     からころもきつつなれにしつましあれば

              はるばるきぬるたびをしぞおもふ  在原業平

     

     折句とは句頭なら句頭、句末なら句末、詩句のある位置にある言葉を一字ずつ折り込む編集技法だ。20周年感門之盟では「イシス折句」なるお題が風韻講座から出された。「イシス」の三文字を句頭において、これまでのイシスライフを振り返る、これからのイシスライフを振り仰ぐ一句を詠んでみようという趣向だ。

     

     実は折句に加えてさらにしばりが加えられた。上五に「イシ」、中七に「シス」を使ってはならないというルールだ。「イシス」「システム」を使った句がわんさか届くであろうことを想定して、キュキュッとしばりを強くしたのだが、さすが編集学校! みな、しばりがあればあるほど燃えるらしい。締切までに延べ119句が投稿された。なかには二度、三度と投稿する猛者もいて、折句はみなの風韻魂に火をつけたようだ。

     

     集まった句は、風韻講座宗匠である小池純代師範と大武、福澤の両連雀の三人が高速で選考、評価をした。上位入選作を21日の感門之盟風韻講座のコーナーでお披露目するためだ。三人それぞれが「☆彡:すばらしい」「◎:とってもいい」「○:いいね」などのマークを付けて集計し、風韻十八座の座名「夕星(ゆうづつ)座」にあやかって、星に関する賞名でまとめた。

     

     感門之盟折句コーナーでは上位五句をごく簡単に紹介したが、ここで改めて上位入選作を選評“ダークマターのささやき”とともに挙げてみよう。(作者名は敬称略としました)


    ・・・・・・・・・イシス折句上位入選作・・・・・・・・・

     

    ☆彡 金星賞 ☆彡  

     

    イメージの滴る銀河掬ひ取り  丸洋子

     ◆天空から知恵の水のおすそ分け。

     *イシスの世界観をぴったりの季語で映した。言葉の流れも見事。

     ♪星の数ほどある想像力の種。

     

    ☆ 遊星賞 ☆

     

    いざ放て! 締切迫る スケジュール  吉田麻子

     ◆共有最大臨場感!

     *あざやかによみがえるキワキワの熱気。

     ♪締切りこそ編集力アップのツール。千夜千冊1654夜で応援したい。

     

    意図綰かす知る多を垂る師姿問い  裏谷惠子

     ◆折り込み超絶回文。

     *折句と回文の合わせ技で技能賞。

     ♪千夜千冊739夜に迫る技巧派。

     

    いただきます守破離稽古と据り鯛  小原昌之

     ◆鯛のお頭をありがとう!

     *開講時のアラタマル気分と「据り鯛」がベストマッチ。

     ♪おめでたい20周年祝いにぴったり♪ 思わず笑みがこぼれます。

     

    幾千の指南の夜の澄みにけり  松井路代

     ◆透明な幾千夜を通貫して届く珠玉の指南。

     *365日、24時間眠らないイシス。すべての師範代に贈りたい。

     ♪星降るように、降りてくる指南。透明な想いが瞬く。


    ◎ 星河賞 ◎

     

    意伝子のしくむインタースコアかな  天野陽子

     ◆句またがりもすいすい快適。

     *今度はミームを手渡していく人に。

     ♪新しい教室が誕生するのも、意伝子のしわざ。

     

    いつまでも 師にあこがれて 忍冬  北原ひでお

     ◆「忍冬:スイカズラ」が新鮮です。

     *あこがれは全ての原動力。

     ♪あこがれの気持ちは永遠に。

     

    いわし雲情報の群れ数寄の群れ  二村典子

     ◆秋の空に編集を思う。

     *秋の空を見上げるのが楽しくなります。

     ♪情報はひとりではいられない。

     

    いずまいの 静かなること 忍冬  川田淳子

     ◆なんて端麗なイシスライフでしょう!

     *本と花を友にする夜をたくさん持てますように。

     ♪花の色が変化するスイカズラは、まるで師範代。

     

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                            

     

     金星賞は最優秀句、遊星星は優秀句、星河賞は秀句といったところだろうか。その他の良句佳句にも星雲賞、流星賞、星のゆりかごなどがふるまわれ、締切以後の投句に対しては、小池師範の温情で「ビッグバン(締切)以後」の席が設けられた。

     

     さて、“ダークマターのささやき”はその名の示す通りほめてばかりではない。「ん、なんだこれ?」「うーむ、意味不明だ」「この発想は私にはない」といった句には「●」をつけている。句会で言うところの逆選の扱いと思っていただきたい。逆選イコールダメな句、というわけではなく、いわば選者の数寄フィルターになんらかのひっかかりを残しながら外にこぼれた句…とでも言おうか。119句のなかには○と●が両方ついたものもあり、逆選はいろいろな意味で選者に強いインパクトを与えた句なのだ。

     

     今回○は一切つかず●のみ獲得した句は「隕石賞」としてその果敢な句作姿勢を讃えることにした。隕石賞…地上に堕ちた星、星と同列では語れない、でも唯一私たちが手にとることのできる星、である。(この辺の定義づけは各自ご自由に)。ここでは●一個の11句から頭一つ突出して●二個を獲得したダントツの隕石賞を、イシス20周年の記憶として刻んでおきたい。


    ★ 隕石賞 ★

     

    いいかげん シガー隣りで 吸わないで        萩原雄三


     ◆まさに校長の薫陶を受け、謦咳に触れたのですね!

     *校長の健康を気遣ってとのことだが、校長から逆選が入りそう…。

     ♪勇気ある一句。


     感門之盟のコーナー企画を盛り上げるためにも、一応「賞」というランク付けをしたわけだが、学衆、師範代、師範、番匠、学匠とあらゆるロールから参加してもらったことが選者一同何より嬉しく、全句に綺羅星賞をさしあげたいくらい。とりわけ守学衆、破学衆から寄せられた句は、いきいきとイシスライフや稽古の楽しさ、そして師範代への感謝を詠んでいてすばらしかった! こうした感謝の句にはきらきら光る星のピンブローチをつけて、師範代にお贈りしたいと思う。投稿くださったみなさん、本当にありがとうございました。


                 … ★ … ★ …

     

     風韻講座では編集を「地」に、折句はもちろん回文に都々逸、五言絶句などさまざまな定型詩を「図」に置きながら、言葉と戯れ、ときに闘い、また添い寝したりもして遊び尽くす。三カ月間の稽古で、小池師範がいくつものポケット、引き出し、玉手箱から多彩に繰りだすアヤの詞は連衆にとって生涯の宝物となるはずだ。まだ受講していない方は、次回の風韻十九座へぜひ!

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    https://edist.ne.jp/list/20th_kanmon_oriku/feed/ 0 13078
    第18座 風韻講座 アワード3賞は誰の手に?! https://edist.ne.jp/list/20th_kanmon_inkyoshiki_18za/ https://edist.ne.jp/list/20th_kanmon_inkyoshiki_18za/#respond Mon, 21 Sep 2020 03:16:19 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=12547 第74回感門之盟の2日目。午前の部では、風韻講座 第18座 夕星座の韻去式が行われた。

     

    風韻講座とは、編集の型を使いながら日本の定型詩を学ぶ・遊ぶ講座である。申し込み開始から、ほぼ一晩、おそくても二晩で埋まってしまう、突破者だけが受講できる”イシスの温泉”。癒しのコースだ。

     

    ステージをナビゲートした木村久美子月匠は、直前の「こども編集学校」のコーナーを受けて、千夜千冊第1219夜「ささめごと・ひとりごと」をひいて、中学生になったばかりの松岡正剛少年が詠った句を紹介した。

     

    「  赤い水のこして泳ぐ金魚かな  」

     

    続いて、風韻講座の師範である小池純代宗匠がオンラインで登壇し、韻去された方々へメッセージを送った。

     

    「今期は、コロナ禍ではございましたが、唯一集う仄明書屋も、皆様のおかげですべてオンラインでの実施ができました。オンライン吟行というもの以上のものとなり、コロナによっても新しいものが生み出されるのだと実感いたしました。

    実際にはお一人ずつ大変なこともあったと思いますが、座閉じの前日には、全員がすべての回答を終えているという、“艱難汝を玉にす”とはこういうことかというような、たいへん立派な座となりました。韻去、おめでとうございます。」

     

    最後に、風韻3賞のアワード発表が行われ、小池宗匠からお一人ずつに、小池宗匠が詠った句の色紙が贈られた。

     

    受賞された皆様、おめでとうございました。

     

    ◆雨四光 宮本千鶴さん

     

    ◆四光 脇ゆかりさん

     

    ◆ポケット太夫 米田奈穂さん 

     

     

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    https://edist.ne.jp/list/20th_kanmon_inkyoshiki_18za/feed/ 0 12547
    Edist編集部の今月オススメ記事はこの1本!【2020年8月】 https://edist.ne.jp/list/recommend_august2020/ https://edist.ne.jp/list/recommend_august2020/#respond Tue, 11 Aug 2020 01:01:03 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=10774
  • 毎月公開されるEdist記事は30本以上! Edist 編集部メンバーたちから、今月おさえておきたいオススメ記事をお届けします。エディストをさらに楽しむ「エディスト・エディション」、どうぞ。
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  • ◎遊刊エディスト編集部◎ 吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 川野貴志 師範, 後藤由加里 師範, 上杉公志 師範代, 松原朋子 師範代
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        • 1 後藤’s Choice! 
        •      ─ 波及のインパクトでPick!

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      • Twitterでのバズり記事!

      • おしゃべり病理医 編集ノートー残酷?お笑いと病理診断
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        エディスト公開後、自治医科大学 病理診断科のTwitterで 「これは面白い!」とツイートされると、一気にリツイートで拡散しました。編集学校界隈ではない医療関係の方々に、広く読まれたようです。病理を「地」としてエディストの記事が読まれるという7月の大事件でした。

        ちなみに私も大腸腫瘍の顕微鏡を覗いたら「小倉先生、白い球がぽちぽちあります」と答えるだろうと思います。

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      • マツコ:まいど常連となったイチオシ小倉師範の連載!「病理医x編集」という意外な組み合わせの波及効果は留まるところを知りません。「コロナ」というキーワードが入ったコラムも、かなり多くの人に読まれましたよね~。ちなみに、ここまで、「コロナ」というキーワードを含んだ記事は79、要チェック!
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    • 2 マエストロ上杉’s Choice! 
            ─ 応援ファンファーレでPick!
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      連載中の「45[守]リカちゃん・クッキング」の創作おやつを実際につくりながら、かつての憧れの女教師の面影を追う、宮川大輔師範によるエディストデビュー作。

       

      全国展開中のオンライン編集ワークショップ「エディットツアースペシャル」では、山梨のワークショップをご一緒したのですが、その圧倒的なムードメーカーっぷりがお見事でした! 「あえて隙だらけの構えで、学衆を稽古に巻き込む場の達人」と吉村編集長も絶賛の宮川師範。今後の動向に注目!です。

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      マツコ: マツコは宮川師範とは数年前、「物語講座」で同じ教室だった仲間なんですよね。そのころから、“奇想天外な発想力・しかし必ず落とし前をつける収束力”に驚かされました。ズキューン、拍子抜け、女教師、ぽんかん指南、三位一体、夏の汗、ニューサマーオレンジ、生命、クオリア……。謎ワード炸裂な宮川ワールドが、暑い夏をさらに暑くしてくれました(えっ?!)

       

      そして、同じくDust記事から、イチオシ、いただきました↓

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    • 川野’s Choice! 
    •      ─ 流麗な文章表現でPick!

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    代打井ノ上シーザー 指南の先に見ているものは

    • を推します。
    •  
    • タイトルでは高尚な目的意識があるように見せかけて、読むとちゃんとdustyな内容になっています(笑)。「流麗な文章表現」という看板とはちょっと異なりはしますが、表現上のテクニックは、書き手の景山和浩番匠のご本業(新聞社デスク)から見てもさすがの案配です。

     

    マツコ: お~!カバー写真に使ったシーザー井ノ上の写真(熱さがよく表現されている)を、最後にもう一度掲載する。この繰り返しのテクニックも、ニクい!テキストもさることながら、写真づかいも記事を引き立てますね。みなさんにも、シーザーの温度感がお届けできたはず。

    そうそう、Edistで、写真と言えば、、、👇


    • 4 林頭 吉村’s Choice! 
    •      ─ イシスの今をPick!

    •  

      エディスト名物とも言える後藤エディストによる「10shot」。
      短歌、俳句に遊ぶ[遊]風韻講座のリアルイベント「仄明書屋」。今期はコロナ状況下でオンラインでの開催となったが、いま・ここ・イシスでしかない場になった。「しつらい」にこだわりぬいた木村久美子月匠、ピリッと辛くておかしみのある小池純代宗匠の「もてなし」、ネット歌合、句会での連衆の即興の「ふるまい」。三位一体を切り取った10shotの第一部は、モノにフォーカスをあて、第二部は人物にスポット。オンライン時代のイベント、これくらいは編集しないといけない。

     

     

     

    マツコ:言葉を磨く「技法研鑽コース」とされる[遊]を、エディストでどう魅せるか?これが、実は編集部のかねてからのテーマでもあります。今季は、連雀の福澤美穂子さんと大武美和子さんが執筆者としてエディストに参加。歌人・小池純代師範の織りなす風韻空間を、読者の皆様にも感じていただけるよう、言葉をつくしはじめられたことが、何よりもの編集部ハイライトなのでした!  風韻関連の記事はこちら

     

     

    • 5 副編集長 金’s Choice! 
    •        成長著しいこの人をPick!

     

    6月から連載スタートした多読ほんほん。イシス編集学校が誕生した2000年から20周年を迎える2020年までをその年に刊行された本たちとともに振り返ります。


    木村久美子月匠を皮切りに、7月は2003年担当の米川青馬さん(レッシグ『コモンズ』)、松井路代さん(2004年、デュピュイ『ツナミの小形而上学』)、松尾亘さん(2005、サイモン・シャーマ『風景と記憶』)、浅羽登志也さん(2006、梅田望夫『ウェブ進化論』)、吉村堅樹林頭(2007年、伊藤計劃『虐殺器官』)、金宗代(2008年、水村美苗『日本語が亡びるとき 英語の世紀の中で』)が連打されました。


    さらに今月は福田容子さん(2009年ナタリー・サルトゥー=ラジュ『借りの哲学』)が登場し、次回はいよいよテン年代で2020年まで突っ走ります。
    もうひとつ、今月は遅ればせながらシーズン2<多読ジム>の三冊筋エッセイもドサっとお届けします。猛暑こそ猛書で乗り切る! GOOD READING!

     

    マツコ:いやぁ、[多読ジム]から届く記事は、読みごたえがありますね。

    お盆休みは、みなさんはいかがお過ごしでしょうか? Stay Homeの方は、ぜひ読書の夏といきませんか? 児童・生徒の夏休みも、今年は短縮されているようですね。短い夏の思い出に、多読チームからあがってきた骨太なクロニクルを読むのもよし。ププっとクスっと笑える
    ショートDust記事もよし、今月の短編小説もよし。マツコは「エディスト三昧な夏」をぜひオシます~

     

     

    いかがでしたか?!

    みなさんのオシは、見つかりましたか?

     

    以上、2020年7月の記事から、編集部おすすめ情報をお届けしました。
    8月も見逃せないぞ、遊刊エディスト! またどうぞお楽しみに~

    (Comments by マツコ@編集部)

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    https://edist.ne.jp/list/recommend_august2020/feed/ 0 10774
    言葉には広大な宇宙がある 風韻講座10shot その2 https://edist.ne.jp/list/18fuin_10shot_02/ https://edist.ne.jp/list/18fuin_10shot_02/#respond Mon, 13 Jul 2020 04:49:03 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=9888  158年前の7月4日、ルイス・キャロルはイギリスの川辺で少女アリス・リデルに即興の物語を聞かせていた。3年後に出版されることになる『不思議の国のアリス』のこと。それから158年後の7月4日、金平糖の天の川が流れる本楼スタジオで風韻講座の連衆はオンラインで豪徳寺を吟行し、夏を詠う。不思議の国とは言わないが、そこには近所の異世界があった。

     

    ◇◇◇◇

     

    俳句の本来と逆選王

     仄明書屋の名物稽古といえば、皆で本楼を飛び出しそぞろ歩いて行う吟行である。しかし、今回はオンラインで行う新しい稽古スタイル。「詩を読む、句を作る、文を書くとは本来リモートである。イマジネーションとはもともと思い浮かべられるもの」と口火を切る松岡校長。オンラインであるからといって、俳句の本来が失われたわけではないのです。

     

     

    オンライン吟行で詠んだ21首が出揃い、連衆はその中から「天・地・人・逆選」を1つずつ選ぶ(上)。「五票入りました」オンラインで投票を華麗に取り仕切るのは衣笠純子(下)。このあと風韻講座の歴史を塗り替えるほどの票を集めた逆選王も誕生し大波乱が巻き起こる。

     

     

    松岡正剛の俳句指南

     吟行は同じものを見ているもの同士が批評し合い、天・地・人・逆選で評価をする。これがとても面白い。しかし、推敲するとはまた別の話。芭蕉もとても推敲する人であった。今日は「こういう風に直したほうがいい」というのではなく、歌や俳諧や句や文章の推敲の仕方は色々あるということで皆の句を見ていきたい。

     

    「余韻や余情というように思いを余してみようとすると言葉が出てくる」

    一人一人の声を聞き、赤と青のペンを交互に持ち替えながら二十一句の寸評をする。

     

    連衆の目となり、手元をアップで押さえるカメラ。松岡校長から直接指南が贈られるのは、この風韻講座 仄明書屋だけ。

     

     

    帯に恋して

    十七音で世界を謳うように帯という部分には全体が表れる。本には何でも入るように、帯には宇宙も宿る。

    大武美和子緋連雀の帯には涼しげにめだかが泳ぐ。

     

    緋色の帯に黄色い帯締めをあわせて福澤美穂子黄連雀。

     

    そして夜空のような着物に、(マラルメの)サイコロの帯留めを振るのは佐々木千佳局長。

     

    木村久美子月匠は、もちろん月の帯留め。コーディネートしたのはしつらいだけではない。

     

    夕星が二つ煌めく小池宗匠の帯。

     

     

    虚にして満ち、実にしてまた空しき

     小池宗匠による仄明書屋歌話。『言語物質論(い)詩を読む プラネタリーブックス7』(工作舎/松岡正剛)の目次「原地球には原始音が立っていた」「言語にはわれわれのあずかり知らない宇宙的プロセスがたたみこまれている」を基軸に北原白秋(一〇四八夜)の詩を読んでいく。

     

     

    白秋の詩集『海豹と雲』を展く。序文にはこうある。

     

     虚にして満ち、実にしてまた空しきを以て、詩を専に幻術の秘義となるであらう。

     

    空虚なのに満ちている、充実しているのに空っぽである。相反する虚と実。これこそが詩のロジックの秘密であると白秋は語っている。詩「水上」を読んでみるとよくわかる。

     

     水上

     水上は思ふべきかな。

      苔清水湧きしたたり、
      日の光透きしたたり、
      橿、馬酔木、枝さし蔽日、
      鏡葉の湯津真椿の真洞なす
     水上は思ふべきかな。

     

    湯津真椿など古めかしく感じられる言葉が並んでいる。これは古い時代を新しく褒めるということ。古いのに新しい。ここにも相反が認められる。

    さらに後記を読む。

     

     一音の言葉にも広大の宇宙がある。此の宇宙をわたくしは日夜に検鏡しつつ、人知れぬ驚喜と嗟嘆とに我が身内も顫へつつある。つまりは言霊の生命といつても眼に見えぬ微塵数の原子から発すること、かの細菌の作用と同一に、わたくしには空おそろしくさへ考へられる。

     

     目に見えないものの中にも宇宙がある。部分が全体を担う。これは千夜千冊エディション『宇宙と素粒子』の追伸「宇宙と素粒子は一緒くたである」に通じているものがある。

     『海豹と雲』が刊行されたのは昭和四年。「かの細菌」とは、その十年前に流行したスペイン風邪を指しているのだろう。言葉も細菌も、その作用の凄さに白秋は畏怖の念を感じている。

     

     虚しくも満ちていて、古くて新しい。

     言葉と宇宙と細菌。昭和四年と令和二年。北原白秋と松岡正剛。

     そのあいだを丁寧に縫い込んで、その縫い目を寸分も見せずに連衆に手渡していく。

     

     一日の終わりの振り返りで「小池師範にとって新しいとは?」という問いを投げかけた連衆がいた。その問いかけに対し「一番古いものが多分一番新しいと思っている。循環しているのだろうと思う」とさらりと応じた。白秋のロジックには小池宗匠の秘密も隠されていたのかもしれない。

     

     

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    https://edist.ne.jp/list/18fuin_10shot_02/feed/ 0 9888
    夕星輝く仄明書屋 風韻講座10shot https://edist.ne.jp/list/18fuin_10shot/ https://edist.ne.jp/list/18fuin_10shot/#respond Thu, 09 Jul 2020 03:42:47 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=9677  温泉と呼ばれる唯一の講座 風韻講座。しかし、稽古は決して楽ではない。見立ての由来は俳句、短歌、都都逸など日本の定型詩を詠んでいくことで温泉に浸かっているかのように何かが解きほぐれていく感覚からきているのかもしれない。

     

    ◇◇◇◇

     

     七月四日に行われた十八座夕星座のオンライン仄明書屋の風景を10ショットでお届けします。まずはしつらい篇です。

     

    芭蕉も子規も詠んだ紫陽花(本楼植物図鑑い)

    紫陽花は初夏の季語。「あじさいの庭まで泣きにいきました」と詠んだのは小6の少女(362夜

     

    笹の葉に香を焚く(本楼植物図鑑ろ)

    2007年冬に開講した風韻講座。第一座の座名は「小笹座」(正式名称:ささゆきは小笹の雪のほのあかり座)であった。座名は小池純代宗匠が名付ける。

     

    夕暮れに伸びる影の葉(本楼植物図鑑は)

    照度を落とすと本楼には夕暮れが訪れる。離れ難き懐かしさは夕方の下校時のよう。

     

     

    梅園雅族苔桃の酒

    入手困難な小池宗匠の著書。その一端を味わいたい方は昨年刊行された『北村薫のうた合わせ百人一首』(新潮文庫)を手に取ってみてください。

     

    京都の老舗のちまきが並ぶ

    500年の歴史をもつ京都の老舗川端道喜のちまき。連句を詠むためのEdit Cafeラウンジ「ちまき星」に肖って。

     

    金平糖の天の川

    「ちまき星」の星は金平糖が担当する。画面越しの連衆も「おやつは金平糖」。

     

    全宇宙誌が羽根を広げて

    昨年の風韻講座期間中には『ことば漬』と『万葉集の詩性 令和時代の心を読む』(角川新書)が刊行され稽古の追い風となった。夕星座には『宇宙と素粒子』が寄り添う。1979年に出版された『全宇宙誌』とともに。

     

    淡い着物に遊を背にして

    風韻の世界を醸成するのは指導陣の着物姿。夕星の如く光るライト。掛けられた〈遊〉の書。

     

    仄明るくて閑かな書屋

    本楼の空間が言葉の器となる。連衆の言葉が入って出ていき、また入ってくる。ただただ楽しかった、でもやっぱり会いたかったという画面越しの思いがほんのりと残る。

     

     

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    https://edist.ne.jp/list/18fuin_10shot/feed/ 0 9677
    【風韻】仄明書屋前夜 しつらひの星々 https://edist.ne.jp/just/fu-in_sokumyou0703/ https://edist.ne.jp/just/fu-in_sokumyou0703/#respond Fri, 03 Jul 2020 14:00:06 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=9630
    あかいめだまの さそり    ひろげた鷲の つばさ    あをいめだまの 小いぬ、    ひかりのへびの とぐろ。                オリオンは高く うたひ    つゆとしもとを おとす、    アンドロメダの くもは    さかなのくちの かたち。                大ぐまのあしを きたに    五つのばした  ところ。    小熊のひたいの うへは    そらのめぐりの めあて。   

     

        妹に七夕星を教へけり 正岡子規

     

    これはベガ。こちらがアルタイル。

    妹の律に指さして教える、微笑ましい二人の姿。

     

     

     

    仄明書屋前夜。本楼にしつらひの星々が燈る。

     

    木村月匠は ブビンガに草・花・書の星を編み、

    穂積デザイナーは オンライン上に星座を集わせる。

     

     

     

    コロナ時代のセミリアル・セミリモートの仄明書屋は 明日十三時より。

    リアルとオンラインをつなぐ新たなコンステレーションが描かれるだらう。

     

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    https://edist.ne.jp/just/fu-in_sokumyou0703/feed/ 0 9630
    第1回連雀会議~風韻史上初の「オンライン仄明」に向けて https://edist.ne.jp/just/fuin_meeting/ https://edist.ne.jp/just/fuin_meeting/#respond Tue, 12 May 2020 01:28:54 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=7995  「URLをクリックしたものの、迷子になってます」「お待たせしてすみません。ダウンロードに手間取ってます」

     

     4月26日14:00、風韻十八座夕星(ゆうずつ)座開講にさきがけて、宗匠、月匠、連雀による打ち合わせ「第1回連雀会議」が開かれた。開かれた…のだが、いずれもzoom会議はほぼ初めての面々ばかりで、少々スタートがもたつく。

     

     もたつきつつも、ようやく全員集合した。画面に映る本日の参加者の筆頭は、風韻講座生みの親・小池純代宗匠。「ええ、オンラインミーティングは慣れてますよ」とでもいった落ち着いた面持ちである。お隣には全面サポート役の佐々木千佳学林局長のいつもの笑顔がある。その下段にひかえるのが、二羽の連雀。今期初の連雀・福澤美穂子は相変わらず楚々と可愛らしい。二度めの連雀ロールを担う大武美和子はしれっとした顔をしているが、実はログインに手間取って20分遅刻した。

     

     さて、最後にドン!と木村月匠が構えていて、となるはずが、画面には黒地に白抜きで「木村久美子」の文字があるばかり。声は聞こえる。顔は見えない。

     

     

     

     「大武さん、どうやったらちゃんと映ったの?」

     

     どうやったらって、アクセスしたらこの画面になっていたわけで、どうもこうもしてません。「パソコンにカメラが搭載されていないんだと思いますよ。声が聞こえるからいいでしょう」と、小池宗匠が軽くながして早速本題に入る。

     

     今回の会議の一番の懸案事項は、7月4日の「仄明書屋」だ。本来なら夕星座一同がリアルで集って五七五まみれで半日、編集稽古に興じる。松岡校長も大変楽しみにしている風韻名物の催しなのだが、今年はリアル稽古が叶わない。

     

            

     

     

     「オンラインでの仄明書屋」が今日の最大テーマだ。既に小池宗匠が脳内書屋でシミュレーションしたプログラム試案をもとに、皆で意見を交わす。

     

     「一番の変更点は吟行ですね。たとえば、カメラで○○を撮って」
       (あまり詳細を明かす訳にはいかないので以下省略)
     「○○については、事前に提出してもらって」
       (同理由で省略)
     「次の○○は、連衆さんを2グループに分けて」
       (これまた詳細は省略)

     

    などなど、気づけば2時間強が過ぎていた。

     

     課題はまだいろいろある。それでも、一番気になっていた「仄明書屋をオンラインでいかに楽しんでもらうか」の具体的なイメージを、ある程度は共有することができた。

     

     7月4日に向けて、連雀会議もまだ何回か重ねることになるだろう。次回は木村月匠の笑顔を見ることができるだろうか。

     

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    https://edist.ne.jp/just/fuin_meeting/feed/ 0 7995