寺田充宏 – 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp Sat, 26 Apr 2025 03:17:27 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.1 https://edist.ne.jp/wp-content/uploads/2019/09/cropped-icon-512x512-32x32.png 寺田充宏 – 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp 32 32 185116051 守の目、鷹の目、目利きの目【伝習座 江戸のあやかり編集力】 https://edist.ne.jp/post/syu-densyuza/ https://edist.ne.jp/post/syu-densyuza/#respond Sat, 26 Apr 2025 03:17:27 +0000 https://edist.ne.jp/?p=85066 4月5日、本楼で「伝習座」が開かれた。前半は田中優子学長によるインタースコア・セッション。「江戸×あやかり」をテーマに2時間の講義が行われた。

この日、田中優子学長が用意したものは、アート・ジャパネスクの18巻。1982年、松岡校長がエディトリアル・ディレクターつとめた、全18巻の日本美術のヴィジュアルブックは、平均値である見方に括られないのが歴史だという思いから、日本美術のアマチュアである工作舎のメンバーによって作られた。

 

校長校話 サーカスとアマチュアと『アートジャパネスク』【81感門】

田中優子が『アート・ジャパネスク』からひも解く「方法日本」【間庵/講2速報】

江戸の文化はあやかり編集力の賜物だ。ページが大きく映し出されるたびに皆が目を光らせる。この巻はコンパイル要素が強く、細見、番付、流行のヘアカタログ、家紋など、江戸の風俗情報が集められ、その中には方法が隠されている。

 

 

          『狂歌師細見』は狂歌師を遊女に見立て、連ごとに分けた戯作


「松岡校長の言葉を理解しよう、それに沿うように考えようとして校長とともに過去の日本の様々にあやかってきた。しかし、今は松岡校長はその向こう側にいる。校長は肖りの対象になった。」田中優子学長は、松岡校長との肖りの軌跡をこう語った。

 

学長の脇を支えるのは、火元の寺田右近と華岡左近。ヨージヤマモトの新作を着た二人は校長の言葉を纏い、編集を体現する。
「肖りは内側、擬きは外側に表象する」
寺田右近が発した一言に、会場の出席者は目を開いた。「内は肖り、外は見立て」そんな言葉も浮かんでくる。

 

 

 

          新作のヨージヤマモトを纏う、右近と左近 

                    

江戸時代は、イメージと世界の共有が爆発したのだという優子学長の言葉に注意のカーソルが向かった。

蔦屋重三郎が刊行し大ヒットした『吾妻曲狂歌文庫』は、狂歌師五十人の王朝歌人風の肖像に狂歌を添えている。例えば、狂歌師 酒上不埒(さけのうえのふらち)は、矢筒に見立てた扇状のものに矢羽をつけて、風雅な狩姿を擬いている。歌は年の瀬の算段だ。

 

もろともにふりぬるものは書出しとくれ行としと我身なりけり
(全て疎ましく嫌いになるものは、請求書の束と迫りくる年の暮れと、歳をとる我が身)

 

優雅な平安人らしからぬ年末の苦労が笑いを誘う。

百人一首や当時流行していた美人画と俳諧を組み合わせた『絵本青楼美人合』の方法は、江戸の人たちの共通知である。皆が知っているモノに肖り、地と図を入れ替えて、生まれたズレが笑いを誘う遊びを蔦屋重三郎はやってのけた。

 


しかし、それらにまして「ミメーシスの編集工学」のバネとなったのは、
古今東西の「型」と「スタイル」をめぐる変遷と分岐の歴史にいろいろ
分け入ったことだった。ここに浮上してきたのが日本の芸能や技能には
格別のミメーシスがひしめいていたということだった。その多くは「見立て」
や「うがち」や「やつし」に、また「準え」(なぞらえ)や「擬」(もどき)
や「肖り」(あやかり)として重視されてきた。

1789夜 ミメーシス(上・下)



共有した情報を使い、くるりと世界を変えてみせる。身分差のため、モノをいうにも憚れる時代の中で、肖り、見立てを駆使し、言いたいことを言ってのけた作品に江戸っ子は喝采をあげたことだろう。
江戸の遊びの方法は、[守]で学ぶ型そのものだ。目利きたちの選んだ方法は、今も日本に生きている。

 

                                                        文・写真 55[守]師範 北條玲子

 

◆イシス編集学校 第55期[守]基本コース募集中!◆
稽古期間:2025年5月12日~8月24日
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu

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編集に触れ学ぶ伝習座:田中優子学長が語る「あやかり編集術」 https://edist.ne.jp/just/densyuza20250405_ayakari/ https://edist.ne.jp/just/densyuza20250405_ayakari/#respond Sat, 05 Apr 2025 12:00:50 +0000 https://edist.ne.jp/?p=84090 東京の桜が満開となった4月5日、伝習座が開催された。

赤堤の本楼には、師範代、師範、編集学校関係者が詰めかけ、オンライン参加には編集学校以外の方々の参加も得て、盛況な開催となった。

 

伝習座は編集学校の根幹をなす座であり、師範・師範代が松岡校長同席のもと研鑽を積む場としてこれまでに25年間で177回開催されてきた。従来は限られた参加者による座だったが、2024年秋から無料ライブ配信し、より多くの方に編集に触れてもらう機会をつくるという新しいスタイルに生まれ変わった。今回の伝習座は通算179回でありその新スタイルの2回目である。

2024年秋から始まったニュースタイル伝習座。第1回のゲストは数理科学者でISIS co-mission メンバーの津田一郎さんをお招きし物語理論とカオス理論を重ねて語っていただいた。

 

 

伝習座は、2部構成になっており、第1部は、専門領域と編集の融合である。専門分野と編集工学と重ねながら相互を読み解き、編集していく場とした。第2部は故松岡校長がこれまでにイシス編集学校の場で指導陣や受講生に語った話を振り返りながら編集を深めていく。

 

本日の第1部は、イシス編集学校学長であり江戸学の専門家である田中優子学長が「江戸に見るあやかり、やつしの編集」について語った。松岡校長からイシス編集学校を引き継いだ学長の初の伝習座ともなる。

 

言葉と言葉の間に新たな言葉が生まれる

 

田中優子学長の講義は「今日からは、あやかりやもどき、なぞらえ、見立て、やつしが、それぞれどこからどこまでを指すのかを考えて使わない」、というあやかりに向かう姿勢の宣言で始まった。言葉の幅を決めるのではない。決めることによって生まれる思い込みを崩す必要がある。言葉を整理するのではなく、言葉の内実が他の言葉の内実と重なり合っていくことに着目する。重なった部分に着目し、どっちがどっちなんだと思うことこそが大事なのだ。そうすると言葉と言葉の重なりから新しい言葉が生まれてくるのだ。

 

分類する、整理する、ということに馴れてしまっている我々は、どうしても言葉を定義し決めてしまいたくなる。そしてその定義に安心していまう。筆者も今回の講義を聴きながら何度も「今のは見立て?それとももどき?」などと思案している自分に気が付いた。言葉を定義するのではなく、そのあいまいさに意識を置く。これがとても難しい。分類することが自然となってしまっている自分の思考回路をみせつけられた気がした。

 

言葉をつくり事例を増やす

 

言葉は切り離さない。むしろ「事例を増やしていく」ことが重要だと、優子学長は強調する。あやかりの中で何がおこっているのだろうか、この仕事のあやかりは何だろうかと考えることで、言葉の理解が始まる。例えば、我々が松岡校長の言葉をきくとき、その「ことば」を理解し従おうとする。これが一つのあやかりである。校長にあやかるということは、校長自身があやかった過去、ひいては昔の日本にあやかるということなのだ。今や我々の中に入った校長の言葉があやかりとして外側に湧き出てきている。

 

第一部の司会進行は、世界読書奥義伝[離]火元組の松岡正剛の絶対の信頼を受けていた寺田充宏が左近として、そして金沢の医者として漢方にも理解が深く、MEdit Lab運営メンバーでもある華岡晃生が右近を務めた。右近・左近は、『[近江ARSいないいないばあBOOK]別日本で、いい。』の言葉をYohji Yamamotoがデザインした黒の衣装で登壇した。校長と古き日本を纏ったいでたちで、場に「あやかり」を持ち込んだ。

 

右近・左近は、松岡校長の「あやかり」と優子学長の語る「あやかり」を交差させその間の目を向け、分け入り、探し続けた。二人の進行によって、新たな言葉を見つけるプロセスが沸き上がってきた。

 

 

寺田充宏左近いわく、校長の口から発せられる「あやかり」は「あやしさ」を纏っているという。深夜に朦朧とした意識の中に見える本質とともに校長が語ってきた「あやかり」には、江戸に見る「あやかり」とは違う趣きがあるのだ。「あやかる」には「あやしさ(妖)」や「あや(文、綾)」が見え隠れする。言葉と言葉の間に分け入ること、日々の中に起こるあやかりや見立てに意識を向けてみると、また新しいあやかりが見えてくるのかもしれない。

 

優子学長は「我々は今、あやかりや見立て、もどきを探すスタートラインに立った。」と、言葉探しの旅に我々をいざなった。

 

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2025新春放談 其の肆 – [離]・[AIDA]・[多読アレゴリア]をまたにかけ、創跡を残す https://edist.ne.jp/just/2025-shinshun-hodan-4/ https://edist.ne.jp/just/2025-shinshun-hodan-4/#respond Sat, 04 Jan 2025 22:00:54 +0000 https://edist.ne.jp/?p=79929 遊刊エディストの新春放談2025、其の肆をお届けします。2024年、松岡正剛校長不在の世界読書扇伝[離]を守って転じ、2025年は[多読アレゴリア]の新しいクラブを構想する寺田充宏別当師範代をゲストに放談していきます。2024年はどんな年だったのか、2025年以降、[離]は、[AIDA]はいかに展開していくのか。ご覧ください。

 

◎遊刊エディスト編集部◎

吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 後藤由加里 師範, 上杉公志 師範代, 松原朋子 師範代,

 

◎ゲスト

寺田充宏 [離]別当師範代/[AIDA]師範代 

 

 

寺田 お招きありがとうございます。

 

吉村 2024年、寺田くんは松岡校長最後の[離]でも、別当師範代を担ってくれました。また、ビジネス・パーソンを対象としたハイパーエディティングプラットフォーム[AIDA]では、AIDA師範代を二期続けてもらいましたね。

 

金  先ほどゲストにお呼びした畑本さんは、次の野望はAIDA師範代か、いつかは[離]の師範代かで、師範代制覇を目指したいらしいですよ。

 

寺田 おー、野望ですか、新年っぽくていいですね。

 

▶【84感門】世界読書の方法が息づく[離]というシステム

 

後藤 寺田さんは、2025年の春からは、[多読アレゴリア]で、ISIS co-missionで数理科学者の津田一郎さんのクラブを立ち上げる準備中ということで。

 

▶<特報>伝習座:津田一郎さん講義「カオス理論と物語編集術」突入レポート

 

吉村 寺田くんは25周年感門之盟の時に津田さんとの[多読アレゴリア]をやってみたいと言ってくれて、任せるなら寺田くんしかいないなと。

 

寺田 いやあ、ありがとうございます。

 

 

◆編集工学の電流に打たれたのはいつ?続ける原動力は?

 

吉村 振り返ると、寺田くんは第9季の[離]を退院して、編集工学研究所に入りたいということで1年ほど編工研のスタッフでもありました。残念ながら色々と家の事情もあって退職はしましたが、その後も師範代や、花伝所での錬成師範も経験して、継続しながら深めてもらった感じですよね。もともとワークや語りのスキルもあるし、サイエンスの関心も高かったと思いますが、これだ、と思ったり、継続して深めていったりするのは、どういうところに魅力を感じていたのだろう?

 

司会者が語る律走とは?リハーサルも律走中!【第81回感門之盟】

寺田 本当の意味で編集工学にさらわれたのは、第9季[離]の時ですね。[離]って格別なんです。異次元といいますか。体は限界なのにテンションは上がってくるし、明け方までやっても編集的元気は満ち満ちてるみたいな。それが魔訶不思議でした。火元組よりも[離]学衆だった時のほうが衝撃度は断然高かった気がします。先が見えないなかで目の鱗をはがすお題に次々と遭遇する。その迫力、面白さは唯一無二の経験でした。

 

  [離]の体験は圧倒的ですよね。

 

寺田 会社や日常生活とは全然違う集中力と想像力が渦巻いているというか。これが広まれば、日本は変わるなと確信しましたね。同時にこの[離]に対する確信は一体なんなんだ?というお題を抱え続ました。その問いが編集工学に関わり続けている原動力になっていると思います。

 

吉村 編集工学を日々深めていくことについては、寺田くんはどんなエンジンやモチベーションをもってやっているんですか?

 

寺田 第一に知ること自体が好きということがあります。[離]のように簡単には分からないけどおもしろいことは特に。知ることで世界観が変わり、見方が変わる瞬間がたまりません。幼いころからエッシャーの絵が好きでした。エッシャーは、陰と陽が変わっていく幾何学や、上り続けているのにぐるぐるするような不思議な階段絵を描いています。子どもの頃にそれらを模写してたほど。フリックが好きなんですね。 [離] を修了し、世界読書をするようになって、様々なところにエッシャー的転換を感じられるようになってきたんです。

 

編集ビタミンが利くぜ!寺田充宏のエディット檸檬ツアー

寺田 あとは編集学校に継続的に関わることができたことも大きかったですね。実香連では、ワークショップを編集工学的に設計し実験する機会をいただきました。手順をどう組み立てたらわかってもらえるのか、楽しくなるのか、普段から「編集工学的に何がおきているのか」を考えることが多くなりました。

 

ワークショップエディターが日本イシス化の先陣を切る!【実香連】

 

◆方法的であり、モデルをつかみ、プレイに長けた人への期待

 

吉村 知的な探求心ももちろんですが、寺田くんはとても方法的だと思うんですよ。ワークショップの伝え方も優れているし、別当師範代としても院をどう運営していくかも方法的に考えている。世界知を方法として渡すこともできるし、運営も方法として見ているでしょう? なかなかそれができる人がいないんですが、それを自分の特質だと感じているところはありますか?

 

寺田 同じ質問を数年前にも吉村林頭からいただいたことがあるんですよね。その時はモデルをつかむのが早いのでは、と答えました。いまも大体そう思っています。

 

吉村 モデルをとるのが得意なことに加えて、寺田くんはプレイするのも得意だね。両方あることが素晴らしいと思っているんですよ。

 

寺田 学生時代にアカペラでステージをやっていたことは、多少役に立っているかもしれません。編集学校でもロールに入るときには躊躇しないように思い切ってやることを意識しています。

 

吉村 2025年は、寺田くんにかかる期待がますます大きくなるだろうと思いますね。

 

寺田 そうなんですね(汗)

 

 

◆ [離]とAI、“マン・マシーン”の可能性

 

吉村 まずは[離]のことを聞きたいと思います。松岡正剛校長亡き後の[離]について思っていることはありますか?

 

寺田 途絶えさせてはいけないと思っています。校長がいらっしゃったときは、指導陣である火元も出入りして、色々な人に校長との世界読書と講座運営を経験してもらうのがいいと思っていました。自分が火元になって学んだことが大きかったので。前別当の小坂さんから継いだ思いでもあります。これからは校長がいらっしゃらなくなるなかで、[離]をどう担って発展させていくのかということは、取り組んでいかなければならないと考えています。

編集を人生する「一生の離」 14[離]退院式 10shot

 

寺田 社会のなかにおける[離]という観点で言うと、人間の想像力や連想力の価値をどう示していき、伝えていくのかが課題になると思います。今はテクノロジーの進歩の中で人の目利き力が奪われていくのが大きな流れではないか、と。例えばAIが作り出したものはパターンであって非常によくチューニングされた平均像なんだと思います。本来はターナーやマイルス・デイヴィスや若冲のように人間が編集をしつくした末の逸脱には必ず価値が生まれるはずですが、その価値が認識できなくなっていくかもしれないことを危惧しています。今後は、自分も含めて、受け取る側の区別する力、評価する力が重要になるはずで。ヘンなものをおもしろがる力といえるかもしれません。校長の著作でいうと『雑品屋セイゴオ』的なものです。編集的に価値あるものとそうでないものの違いをどう見せていけるかということが大事だと思っています。

 

吉村 編集学校や[離]の中でも、どういう価値づけができるかを言えないとダメだと思うね。編集学校の中でも、1月19日にはISIS co-missionメンバーの宇川直宏さんを講師に特別講義を開催します。AIで教室名を画像にすることをお題としています。編集学校でもAIに忌避意識がある人がいますが、松岡校長なら、AI使うのは止めようとはならない。どう使うのか、どこに問題があるのか、何が足りないのかを考え、さらにそれを活用にして次の編集をどのようにしていくのかを考えないといけないですよね。

 

寺田 以前、[離]の会議のあいまでAIについて校長と話をしたことがありました。そのときAIは使う人の想像力を削いでいるのではないか、というような批判的な話をしたんです。校長は私の話を受けて、「僕が関心をもっているのはマン・マシーンなんだよ」とおっしゃいました。マンとマシンがつながって、おもしろくなることを目指しているんだと言われて、ああそうか、となりました。つまらないところでアンチAI感を出していたことを反省しました。それこそ想像力がない。今は「編集をおもしろくするためのマン・マシーンとは?」をお題にしています。

 

後藤 カメラもマン・マシーン。校長が芸術の中で写真が一番好きだと言われる理由はそこにありますね。

 

寺田 ですね!先ほどの宇川さんというところでいうと、昨年12月に横浜でモントルー・ジャズフェスティバルがあったんですよ。宇川さんがDJとコラボして映像制作されていました。その場の音楽にあわせながら DJが皿をまわしている映像をリアルタイムで連続する生成画像に置き換えていく作品でした。画像の種類も哲学者やロボット、都市やジャズメンという風に次々とうつり変わっていく。別の世界へ強制接続されるような奇妙な感覚をおぼえました。メインゲストのハービー・ハンコックで象っていくところなんて小粋すぎて。ミリ秒単位のめくるめくミメーシスですよ!AIで想像的な表象を生み出すお手本をみせていただきました。

 

生成AI時代における「編集工学2.0」!!!!!!!

校長&林頭が現“在”美術に!!!!! 宇川直宏展@練馬区立美術館

吉村 校長が言われたように、マン・マシーンなので、基本的には鉛筆や眼鏡やイラストレーターを使うのと、AIをつかって画像をつくるのはかわらないわけですよ。ただし、どうやったら編集力が生かされたり、自分自身が発揮できたりするのかという方に向かっているかどうかが重要であって、そこら辺を履き違えないっていうことが何よりも大事なんじゃないかなと思うけどね。

 

寺田 コロナの時に校長から、書物だってリモートだった、といわれてハッとしました。新しく出てきたように感じるリモートだっておおもとの情報があったんです。それなら、どのような方法でリモート情報と関わっていくのか、それが重要なんだなって考え直しました。

 

吉村 リモートの編集も、もっと考えたいよね。リモートワークがデフォルトになりつつある時代に、リモートワークの編集はどう面白くできるのかを考える必要がある。

 

寺田 今は揺り戻しでリモートコミュニケーションの限界が見えてきてみんなやめよう、となっているけど、面白くできる余地はあるはずですよね。

 

 

◆ビジネス・パーソンこそ、編集工学を“地”に:[AIDA]の可能性

 

吉村 ところで、[離]とは別に、寺田くんにはハイパーエディティングプラットフォーム[AIDA]の中でもAIDA師範代を担当してもらっています。僕は[守破離]の講座だけでなく、[AIDA]も数々のプロジェクトも含めてのイシス編集学校だと思っているんです。そう考えたときに、これからのイシスを担ってもらう寺田くんに[AIDA]を見ていってもらいたいと思っている。AIDA師範代を二期してみて、どうですか?

 

寺田 ビジネスとの接点には興味があるので、[AIDA]の講義はおもしろいですね。その道の編集達人たちが講師としてもっとも鋭敏なところを見せてくれることがありがたいです。それを編集工学としてとらえたときにどう見ているかを、なるべくお伝えするようにしています。座衆の皆さんはビジネスにどう応用できるかが基本のスタンスになります。そこに対して、いかに編集工学の魅力を伝えられるか、皆さんが考えている領域外に目を向けてもらえるかが、AIDA師範代の役割だと考えています。座衆のなかには、編集工学を直感的に面白いと感じていらっしゃる方が何人もいらっしゃいます。「ピンとくる」は編集工学にとってものすごく大事です。ディープなものも含めて編集工学の虜にできるといいなと思っています。

 

吉村 [AIDA]や企業研修では、どうしても短い期間や1回きりになってしまうので、編集学校に比べて受講者がなかなか大きく変わるところまで行きつかないように感じます。編集術や知識を習得することにとどまらず、世界をどういう地で見ているかが重要で、今あるビジネスを地にしていると、情報の見方や考え方が変わらないんですよね。

 

寺田 私も普段は企業で働いているビジネスマンで、いつもは会社のルールのなかで、編集力を発揮する余地を自分で見いだせなかったりします。私のアプローチの不足でもありますが、デスクに座ってしまうと所謂ビジネスモードになってしまう。編集工学を実践するためには、編集学校の外でたくさんの私状態になる稽古が継続的に必要なんだろうと思います。私も精進してます。

 

吉村 デスクに座るとビジネスマンになっちゃうし、個人では変えられないと思うのかもしれないけれども、これからは編集学校が提案をしていくフェーズになるでしょう。

 

寺田 編集では冗長性やハズレも大事にするため、効率性の追求やリスク低減の動きにどうアプローチしていけるか、がポイントかもしれません。校長がおっしゃっていた「界を限る」にヒントがあるように感じています。効率性やリスクヘッジを一部でも打ち破るだけのすごさをみせられれば、ルールを変更していける可能性があると思います。虎視眈々ですね。

 

 

◆津田一郎氏との[多読アレゴリア]、春に向けて構想中

 

吉村 AIDA師範代をやりつつ、次は、春から、津田一郎さんの[多読アレゴリア]クラブの立ち上げですね。

BPTと変分原理 ー54[守]師範が見た伝習座ー

寺田 津田さんと一緒に読書するイメージはあるんですが、最後のアウトプットのイメージがまだつかめていません。今は『心はすべて数学である』を読んでいるんですが、システムというか、系がどう動いていくか、その条件をどうつくっていくのか、めちゃめちゃ刺激的だし、編集工学とつながっていると思います。

 

吉村 津田一郎さんへの質問状をみんなでつくるのはどうかな? クラブのみんなが10個の質問を考えました、とか。津田さんに、これはいい質問だね、といってもらったりしたらよさそうじゃないですか?

 

寺田 それ、いいですね!津田先生の文章を読んだとき、常に違う世界を見るんだという姿勢がうかがえて、感銘を受けました。神経活動における情報の挙動という、極小のなかから世界観そのものを問い直すというダイナミックさがすごい。エピローグに荘子、三浦梅園、岡潔が連打されていたことにもシビれました。津田さんの問いは世界観を問うものだと思います。

 

▶津田一郎さんと松岡正剛校長の共著 

初めて語られた科学と生命と言語の秘密 (文春新書 1430)

 

吉村 寺田くんにとっても、2025年はさらに活躍の1年になると思いますが、[多読アレゴリア]をやりながら、エディストを書いてもらえるといいと思っています。

 

寺田 書けるかなぁ(笑)、ただ、今年は編集学校にとって大切な1年になると思っています。イシスの力を結集させたいですね。

 

吉村 エディットツアーのワークショップをする寺田くんの軽快さと、[離]の火元の重厚な様子とはまた異なって、”たくさんの寺田”を見せてもらっていますね。[離]の太田香保総匠も寺田くんの存在を大きく感じていらっしゃると思いますね。

 

寺田 本当をいうと別当師範代ロールは、いつものキャラクターとギャップがあるんですよね。普段は比較的柔和なほうだと思います。[離]で稽古を加速させるときや大きくフェーズを変えるときには結構頑張りました。思い切った袈裟懸けや痣をつくる張手が必要なシーンもあります。これも火元全員の連携あっての別当ロールで、このシーンになるんですけどね。

 

上杉 エディットツアーの時の寺田さんと、別当師範代の寺田さん。それだけでもすごいのに、「ジャパネットたかた」もどきまでできてしまう。その幅の広さが寺田さんの編集力をすごく象徴しているなと思っていて、やっぱり、その何か引き受ける、継ぐ、ということを体現される方だという印象を改めて持ちました。

 

吉村 別当師範代でもすでにつくってくれていますが、ぜひ次世代に継承する寺田モデルをつくってもらえるといいですね。

 

寺田 少しでも皆さんに創跡を残せるようにと思っています。

 

吉村 楽しみにしています!

 

 

其の肆はここまで!

其の伍では、流麗な編集用語解説で人々を魅了するエディスト・ライター、Mさんをゲストに放談していきます。お楽しみに~🐍🐍

 

 

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🎍2025年 新春放談🎍

其の壱 – 今年、エディストは“松岡正剛の再編集”へ向かう(1月2日公開)

其の弐 – 死者との約束を胸に、新潮流[多読アレゴリア]を動かす(1月3日公開)

其の参 – イシス随一のマエノメリな姿勢が武勇伝をつくる(1月4日公開)

其の肆 – [離]・[AIDA]・[多読アレゴリア]をまたにかけ、創跡を残す(1月5日公開)(現在の記事)

其の伍 – ひと文字から広がるシソーラスが自由の境地をひらく(1月6日公開)

其の陸 – 編集力をあげ、「遊気」をもって、いざさらに刺激的なイシスへ(1月7日公開)

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結びと水引がつなぐ【81感門】 https://edist.ne.jp/just/ust-kanmon81_sasaki_terada_inagaki/ https://edist.ne.jp/just/ust-kanmon81_sasaki_terada_inagaki/#respond Sun, 19 Mar 2023 05:33:02 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=55065 桜の季節は特に日本を意識する季節ではないだろうか。桜、墨、蒼、銀に白。感門之盟2日目は、日本の伝統色で始まった。


佐々木局長は、桜色の着物を黒の羽織で引き締めて、帯に結んだ帯締めははんなり藤色だ。

 

 


佐々木局長からバトンを受けたのは、15期[離]律相院を駆動した異次元のエンジン、稲垣景子師範と、そのエンジンの回転数を上げた名伯楽、寺田充宏別当師範代。着物の帯から作られたベルトを結び、水引を意識した紋様をまとった稲垣師範と、ことほぎの紅色の蝶ネクタイを結んだ寺田別当師範代はブルーノ・ムナーリのシャツで律走のエネルギー、想像力を刺激する。

 

寺田別当師範代が、「守が楽しいのは、世界とつながっているから」と答えれば、稲垣師範は、コップ一つで世界が変わる。知らないことは怖いことではない、新しいことが楽しい」と語った。退院を経た師弟は、左右に並んで感門之盟をナビゲートする。

 

つないで結んで、さまざまな関係の結び目が律走を後押ししているのだ。

 

 

インスタ ストーリーも律走中!
Instagram(@isis_editschool)
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司会者が語る律走とは?リハーサルも律走中!【第81回感門之盟】 https://edist.ne.jp/post/81kanmon_reheasal_01/ https://edist.ne.jp/post/81kanmon_reheasal_01/#respond Fri, 17 Mar 2023 11:00:43 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=54679  桜より一足早くイシスの祭りがやってくる。半年間の編集稽古っぷりを寿ぐ感門之盟のリハーサルが始まった。今期のテーマは「律走エディトリアリティ」だ。

 

 

 2023年3月16日、校長松岡正剛を筆頭に感門を寿ぐ当期指導陣と、P1グランプリの登壇者、場を支え、ビデオやZoomで本楼と学衆をつなぐ黒膜衆が、本楼に集結した。平日夜の開催らしく、スーツ姿で駆けつける登壇者も多い。

 司会は15[離]別当師範代・寺田充宏、離学衆稲垣景子の律相院師弟コンビ。寺田からビシバシと檄が飛ぶかと思いきや、稲垣をのびのび走らせ、後は全部引き受けようとする、父のような眼差しが印象的だ。

 稲垣は登壇者、本楼参加者、Zoom参加者、黒膜衆、参加が叶わない学衆、編集学校の外の社会の間に入り、関係線を引くべく、ひとつひとつの応接を入念に確認していく。そんな稲垣に「律走エディトリアリティとは何か」を問うてみた。

 

筆者:稲垣さんのイメージする「律走エディトリアリティ」はどんな感じ?

 

稲垣:律走の意味が違ったんですっ!

 

───稲垣はテーマを聞いた直後から、単語の目録を集め、イメージの辞書を編んでいた。エディトリアリティはエディストで検索すると色々書いてあるからイメージを広げやすい。でも、律走はわからない。世界のあらゆるところにある自律的システム。寺田別当が院を「生命モデル」に見立てていたこともあり、たとえばオートポイエーシスのようなものを思い浮かべていた。

 ところが、リハ前日に届いたタブロイド紙『エディターシップ第13帆』を読み、認識がガラッと変わったという。

 

エディトリアリティとは、世の中にはない造語ですが、なんらかの編集力や「技」によって、当面する表現体にアクチュアリティやリアリティが醸し出されたり加速されたりすることを言います。素材が組み合わさって編集的効果が動き出すんですね。この動き出しが律走です。

 

エディターシップ第13帆より

 

稲垣:全体じゃなくて「動き出し」のことなんだ、って。驚きました。モードチェンジの瞬間。それが律走なんです。

 

───リハの合間、松岡が稲垣に律走した。

 

 

松岡:司会という機能に徹しようとしないこと。機能に留まらない、自分の間があるはずだ。“代”をイメージしてエディティングキャラクターを突出させなさい。

 

 

 稲垣の目が輝いた。松岡と稲垣の律走の瞬間だった。寺田が柔らかい眼差しで見守っていた。

 

───改めて稲垣を直撃した。

 

清水:“代”をイメージしてエディティングキャラクターを突出させる、とは?

 

稲垣:まず「私は稲垣景子だ! という状態でいきなさい」と言われたんです。“代”は、「広瀬すずでも、大地真央でも、誰でもいい。堂々とエディティングキャラクターを突出させるにあたって借りるモデル」という意味なんです。

 

清水:ただ、相手と自分のアイダに入ればいいわけじゃないんですね。


稲垣:「聞き手」との間(アイダ)の話をされた、というよりも、自分の間(マ)を意識して、モデルをもっとしっかり出していきなさいね、ということと受け取っています。


清水:ってことね。そうなると、誰のどんなモデルを借りるのか、気になります。

 

稲垣:ネタバレになるから、それはフセたいです。

 

 稲垣が司会をつとめる感門之盟2日目は、自らを破った学衆を寿ぐ突破式、学衆から師範代へと律走する放伝式、ミュージアムのハイパーさを競うP1グランプリなど、律走的応接が求められる企画が目白押し。最後には校長校話も控えている。稲垣の動き出しの瞬間に参加者もぜひ「律走」されたし。

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[週刊花目付#20] 編集的振動状態を励起せよ https://edist.ne.jp/nest/haname_020/ https://edist.ne.jp/nest/haname_020/#respond Tue, 26 Oct 2021 12:05:41 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=32190 <<35[花]

 

■2021.10.23(土) 36[花]入伝式

 

 36[花]の風来は金木犀の香気を纏って音連れた。金木犀は、点呼へ一番に応じた入伝生サワダの心尽しだった。花の空気が人の気配と抱合して、座のモードは一気呵成に共読へ向かった。


 式目演習の前に課しているプレワークでの発言スコアは「e-馬力」「e-トルク」(*)とも過去最高値を更新し、とりわけ「インタースコア指数」(*)は200%に迫るスコアを示した。36[花]20名は、自己言及の倍近い言語量を費やして他者交流を志向している。

 

e-馬力e-トルク

「e」は「editorial」の頭文字。編集稽古での応答速度、発言頻度、言語量などから導出した指標。編集的な応接力やメッセージの訴求力を定量的に概観できるだろう。

インタースコア指数

発言のなかで自身の編集プロセスについて言及する量と、場や仲間へ応接する量とを、文字数で計測した比率。編集的な個性や冗長性を測る目安になるだろう。

 

 入伝式までの用意は充実していた。入伝生は全員が前夜までに必須課題を提出し、指導陣はその様子を備に観察し、ゲームプランをイメージし、卒意のライブ編集が2人の花目付に託された。
 今期は林朝恵花目付とデュオを組む。私にとって林は花伝所も師範代登板も師範拝任も同期だ。アイコンタクトの効く相方は心強い。

 

 さて「卒意のライブ編集」とは、たんに流れに乗じたインプロビゼーションではないし、ハプニングを制御するリスクマネージメントでもない。動的な場のなかで、行き当たりバッタリを行き当たりバッチリに、偶然を必然に転換させるための、イメージメントの疾駆とメイキングの実践なのである。
 そのとき求められるのは、刻々と変化する情報を捉える照合の力と、別様のオプションを発見する連想の力と、hereからthereへと向かう冒険の力なのだ。

 

◇入伝式第2部「問答条々」。寺田充宏師範の編集工学講義は、別番を務めた14[離]での残念を白状することから語り起こされた。残念や不足、事件や危機を編集機会とするためには、1.言葉をかえ、2.分け方をかえ、3.速度をかえ、自らを編集的振動状態(エディトリアル・フラクチュエーション)に置かなくてはならない。
◇そこから様々なものが生まれ出るエディトリアル・フラクチュエーションを、寺田は「わせたかしい」(=わたし+せかい)という造語によって概念化した。わせたかしい状態とは、いわば編集的原始スープ状態なのだ。

編集的振動は「わたし」と「世界」の境界を取り払う。そのとき「わたし」は、1.世界に接地し(応境=アフォーダンス)、2.別様の可能性を類推し(渡境=アナロジー)、3.仮説領域で驚くべき事実を発見し(超境=アブダクション)、世界観を更新して行くのだ。

 

◇入伝式第4部「別紙口伝」。インタースコアとは、2つ以上のスコアを組み合わせ、それらの境をまたぐことであり、それが編集工学の始まりである。その基本の話をもう一度つかみ直して欲しい。松岡校長の口伝は抑制された調子ではあったが、編集的振動状態を励起させるには充分過ぎるほどの潜熱を帯びていた。
◇編集の基礎訓練は「わかる/かわる」「カワル⇔ガワル」「たくさんの私」に尽きる。花伝所は、そのことをしっかりと見直す場なのだ。生命や歴史や文化が生んだあらゆる方法を「3A」に集約してイシス編集学校をつくったけれど、今はまだ一歩半しか進んでいない。もっとワナワナと転倒しなければ駄目だ。
◇「ゲート・エディティング」を花伝所では重視してもらいたい。しきい(閾、敷居)をまたぐとき、「IF/THEN」なのか「AND/OR/NOT」なのか。そこに留まったまま何かを運ぼうとしてはならない。編集稽古は「乗り換え/着替え/持ち変え」を起こそうとしているのだから。

 

 濃密で重厚な情報の波を、溺れずに渡り切る力が試される一日だった。そのときのヒリヒリした感覚にこそ、私たちは注意のカーソルを向けなければならないのだと思う。鮮烈な突起に感応する編集感覚を、ますます磨いて行きたい。

 

 

■2021.10.24(日)

 

 「速さと深さを両立するのは難しい」と多くの人が口にする。けれど私はそれに共感しない。
 まぁたしかに難しさという面については同意するが、感性を提供することを生業とする者にとって、ここは譲れないプライドがある。そもそも「速度」と「深度」は、「感度」を親とする二点分岐なのだと思う。
 
 入伝式を振り返りながら、そんなことを考えた。

 


■2021.10.25(月)

 

 日付が変わって4道場へ第1週目の課題が配信され、なんと4名が即日回答で応じた。稀にみる初速だ。エディトリアル・フラクチュエーションのパンデミックなら歓迎したい。

 

 「入伝式からぞわぞわが止まりません。入伝式で振動してしまっているのかも」
 わかくさ道場で起爆したオオツカの執念に、中村麻人花伝師範が即応し、執念を自覚してこそ数寄が生まれるのだと称えた。

 

 36[花]の問感応答返がキビキビと始動している。共読から響読へ、振動を増幅させて「渡」にむかいたい

 

(撮影:後藤由加里)

 

次号>>

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14[離]典離授与式 思慕3カ月を経てふたたび【77感門】 https://edist.ne.jp/list/77kanmon-14ri/ https://edist.ne.jp/list/77kanmon-14ri/#respond Sat, 04 Sep 2021 13:17:53 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=29399 今回、第77回感門之盟で、世界読書奥義伝 第14季[離] 典離授与式が行われた。実は14[離]の退院式は、2021年5月の第76回感門之盟ですでに行われている。しかし、第76回での退院式には大きく欠けていたものがあった。それは松岡正剛校長の存在だ。肺がん手術がちょうど重なり、退院直後のためにやむなく姿を見せることができずビデオレターで登場したのだった。今回、第77回感門之盟では、校長とともに改めて14[離]の授与式をとり行った。

 

典離とは、“指導陣である火元組を突き動かしたものが一番たくさんあった学衆に贈られる”(校長談)、とも、“決して平均点が高い方というわけではない。どこか突き抜けている。格別であること。例外的であること。”(太田総匠談)ともいわれる。14[離]では、3名に典離の称号と松岡校長直筆の書が贈られた。

 

◆第14季[離] 典離:曵瞬院 山口泉さん◆

 

◆第14季[離] 典離:曵瞬院 大泉健太郎さん◆

 

 

◆第14季[離] 典離:武臨院 寺田悠人さん◆

 

 

続いて、COVID-19の影響を受けつづける社会情勢の中、20週間にわたり30名の離学衆を導いた火元組一人ひとりに、校長直筆の書が手渡された。

 

◆火元組 倉田慎一別当

 

◆火元組 小坂真菜美別当

 

◆火元組 K別番

 

◆火元組 寺田充宏別番

 

◆火元組 おおくぼかよ右筆

 

◆火元組 桂大介右筆

 

◆火元組 田母神顯二郎方師

 

◆火元組 小倉加奈子析匠

 

 

5月から思いを募らせた3カ月をへて、ようやく松岡校長とともに「一生の離」のはじまりを寿ぐ機会が到来した。授与された皆様、20週間を走り抜けた離学衆の皆様、火元組の皆様、おめでとうございました。

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【三冊筋プレス】記憶多様化・読書世界(寺田充宏) https://edist.ne.jp/post/sansatsukin_terada/ https://edist.ne.jp/post/sansatsukin_terada/#respond Thu, 29 Oct 2020 01:09:08 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=9892  物理学者フリーマン・ダイソンは『多様化世界』で「最大多様化は、しばしば最大のストレスをもたらす」と書いている。多様化とは摩擦と争いをうむのだろうか。


 私の13歳の時の記憶である。黒に塗りつぶされた建物の影の間を緑の蛍光色の光がいくつも飛び交っている。ニュースで観たクウェート爆撃の映像だ。初めて観るリアルタイムの戦争行為だった。イラクが悪者にみえた。およそ30年が経った今も国際関係はきな臭い。イスラム国は解体されたというが、中東は依然不安定な情勢だ。米国ではトランプの自国主義が幅をきかせ、人種差別問題が燻る。中国は神の見える手とデジタルシフトで国力を増した。COVID-19によって米中の対立はより深まっている。差異が争いをうんでいるようにもみえる。

 

 国際派アラブ知識人であるエルマンジュラは湾岸戦争が第一次文明戦争であったと断言した。初めて経験する真の世界大戦ともみなした。ユネスコをはじめとする国連機関に20年以上勤めてきたせいで、欧米の傲慢さにも第三世界がおもねる姿にも苦々しい思いを抱いていた。『第一次文明戦争』には怒れる声が響いている。同時にアラブ・イスラム世界を端然とみる目がある。

 以前から西洋のヘゲモニーがイスラム世界を取り込みつつあった。実はその中で自立を示そうとしたのがイラクだった。米国はフセインの態度を歓迎しない。多国籍軍の圧倒的火力は、反抗しようとする第三世界へ警告でもあった。さらに言えば米国はトラウマを払拭するチャンスにもした。戦争終結の日にジェイムズ・ベイカー国務長官は「ヴェトナム敗戦の記憶を抹消できた」と会見で述べている。

 イスラムでは記憶のことをズィクルと呼ぶ。集合的記憶であり、アラブ・イスラム社会の向かう先を示すものだ。しかし、ズィクルは西洋によって浸食され、塗り替えられつつあった。湾岸戦争では爆撃によって叩かれることになる。エルマンジュラの言う文明戦争とはつまり記憶の戦争だったのだ。

 

 グローバルな世界では多様な見方と記憶があちこちで交わることになる。戦争のように差異が際立って衝突もすれば、デモ隊のように類似によって密着もする。はたして多様性を持ちながら、かつ持続する仕組みとはどのようなものなのか。

 フリーマン・ダイソンは生物にヒントがあるという。生命はスタート時から複雑さを内包していた。複製を繰り返すなかでパターンを増やしていった。

 生命は情報を伝達するシステムだ。遺伝子というメディアに乗せ、生命に必要な設計図とプロトコルを次代に伝えていく。だが、遺伝子は細胞という構造体がなければ機能しない。つまり遺伝子がソフトウェアで、細胞がハードウェアにあたる。生命活動にはコードを継承し、構造をつくることによってシステム全体を複製していく仕組みが動いている。

 このとき生命情報を保つこととバリエーションを生むことの双方にとって重要なのは、意外にもエラー率である。コードの複製精度がある範囲を逸脱するとシステムが壊れる。一切の間違いが起きなければシステムが停滞し、環境変化に負けてしまう。生命はエラーが持つゆらぎの力を使って自らの情報を残し続けてきた。38億年に渡って情報を継いでいくことを可能にした方法である。

 

 ひるがえって人々が記憶を継承するときはどうだろか。イスラム世界ではクルアーンは書物であるという以上に神の属性にあたる。読むことは信仰そのものである。エルマンジュラは失われつつある集合的記憶を取り戻すためにはクルアーンを新しいアプローチで読まなければならないといった。

 ボルヘスの『伝奇集』は読書がエンコードとデコードの技法であることを教えてくれる。読み手が解釈力を上げれば、読書は魔術のように自在になり、いくらでも新しい方法で本に臨むことができる。「バベルの図書館」では一冊の本が世界であり、世界が一冊の本であることが暗示される。「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」にあやかり、全く同じ記号から多彩な意味を引き出すことも可能だ。ボルヘスの特徴はそれ自体が一個の迷宮であるようなテクストである。多岐多様な引用や傍証が織り込まれ、世界の記憶に編みこまれている。

 

 テクストに折り畳まれた意味は読み手の持つプログラムによってデコードされ、同時に記憶としてエンコードされる。本の迷宮が転写される。読書は情報を複製伝達しながら、それを多様化させる「記憶の生命システム」であった。エルマンジュラは民族の記憶、つまりズィクルを継承するには、クルアーンと人々が一体となった読書そのものを手渡していくべきだと言いたかったのだろう。西洋ヘゲモニーからの圧力を受けているからこそ、内側では集合記憶を維持するための解釈の多様性を生むことができるはずである。

 「ストレスの最大化」を表明したダイソンはSF的想像力を使った摩擦の克服方法を示してくれている。宇宙で増殖する鳥「アストロチキン」のようにありそうもないことに思いを致すことだ。行き詰りや衝突を前にしたときにはボルヘス的オクシモロンで飛躍力をあげるとよい。差異がうまれる場所には、争いではなく、新たな解釈可能性の息吹を感じるべきなのである。

 

●『第一次文明戦争』マフディ・エルマンジュラ/御茶の水書房
 『多様化世界』フリーマン・ダイソン/みすず書房
 『伝奇集』J.L.ボルヘス/岩波書店

 

●3冊の関係性(編集思考素):三間連結型

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エディション読みが描く『それでも、読書をやめない理由』 https://edist.ne.jp/post/tadoku_edition_yomi/ https://edist.ne.jp/post/tadoku_edition_yomi/#respond Fri, 17 Jul 2020 01:58:36 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=10002  <多読ジム>Season03が夏の扉を開ける、その2週間前。

 

 2020年6月28日(日)24:00、Season02は終わりの時を迎えた。

 

 100人を超える読衆のトレーニングは各々の読筋をふるわせ、爽快感と未練、汗と涙のしずくを残す。

 <多読ジム>のお題のひとつ、「エディション読み」では『千夜千冊エディション』のリコメンド文づくりが行われる。

 いわゆるブックイベントなどの推薦本につけられるリコメンド文は、相手や自分のシチュエーションが主役になるか、あるいは本の要約に留まり、著者と内容、そして自分との関わりが響いてこないものが多い。読書を自分ごとにするのではなく、一般論に留まりがちだ。

 しかし、<多読ジム>ではアナザーセルフ、すなわちその本の「読前」の自分に向けて、千夜千冊のエッセンスを贈るつもりでリコメンド文に取り組む。著者や松岡正剛のイメージも加えながら、自分の心に刺さったフレーズを随所に取り入れていくのだ。

スタジオこんれんSeason02の読衆であり、編集学校では編集レクチャーの名手として活躍中の、寺田充宏師範による『千夜千冊エディション 本から本へ』よりリコメンド文を、図と共に紹介する。


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<リコメンド文>

 本には何でも入ることはとっくの昔に教えてもらった。だが校長の読書には遠く及ばない。そこで本書だ。読むことと書くことを行き来する方法がハイパーリンクして全頁に横溢している。

 いずれも多様である。『正法眼蔵』の禅観75項目を一気に同時現成させ、A~Lまでの多重のポオを呼び込んだかと思えば、エーコとブラッドベリを突き抜けて『それでも、読書もやめない理由』が実感できる。
 読書と編集は社会の情報編集に対する抵抗なのである。

 本と交際するには文字をなぞるだけではおぼつかない。カラザースに中世の読書術を学ぶべきで、アフォーダンスが出入りする体ごとのエクササイズにしなければならない。

 

 千夜千冊の勝手と自分勝手を重ねて読んで、書いて、また読め。

 

 

<寺田師範による図解>

 


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 『本から本へ』に収録されている『正法眼蔵』『記憶術と書物』『薔薇の名前』『華氏451度』。
 世界読書の奥義から、書架の森を抜け、一通りでない読み方の指南を受け、ビブリオゲームに遊ぶ。宗教、文学、教育をテーマにした本が過去から未来へ連綿と渡る。

 

 読書は1冊読んだら仕舞いではない。本から本をつたって自分と著者、あるいは松岡、そしてスタジオの仲間の記憶と情報を繋ぎ合わせる。ある1冊が別の1冊を掴もうとする、その力が“読書をやめない理由”をもたらすのだ。

 <多読ジム>では読書がハイパーテクストであることを誰もが体感できる。
 寺田師範は本と自分だけでなく、読み方も能動的になることを伝えた。

 

●多読ジムseason03夏 開講中

 

●エディットツアー
イシス編集学校の師範・師範代によるレクチャーを通じて、ユニークな編集ワークが体験できる。春に続いて、今夏もオンラインツアーを開催予定

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https://edist.ne.jp/post/tadoku_edition_yomi/feed/ 0 10002
Edist編集部の今月オススメ記事はこの1本!【2020年4月】 https://edist.ne.jp/list/edist-recommend-202004/ https://edist.ne.jp/list/edist-recommend-202004/#respond Thu, 09 Apr 2020 01:17:35 +0000 https://edist.isis.ne.jp/?p=7121
  • 毎月公開されるEdist記事は30本以上! Edist 編集部メンバーたちから、今月おさえておきたいオススメ記事をお届けします。エディストをさらに楽しむ「エディスト・エディション」、どうぞ。
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  • ◎遊刊エディスト編集部◎ 吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 川野貴志 師範, 後藤由加里 師範, 上杉公志 師範代, 松原朋子 師範代
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  • 副編集長 金’s Choice! 
  •       成長著しいこの人をPick!
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  • 44[守]リカちゃんのミメロギア・クッキング 絹なオムレツ 食してみたら?

    まず、「リカちゃんのミメロギア・クッキング」ですね。
    けっこうな無茶ぶりにもかかわらず、企画を面白がって、しかもスピーディにこれだけの力作を仕上げてくるリカちゃんは立派! ザッパ感もちょうどいい。林朝恵さんのディレクションも見事なハコビとサバキでした。

     

     

    同じく、新企画の堀江純一さんの「マンガのスコア」はなかなか難産でしたが、それだけに産声が言祝ぎたい。

     

    マンガのスコア LEGEND01手塚治虫①『火の鳥』模写

    マンガのスコア LEGEND01手塚治虫②「丸みうねうね 質感ヌメヌメ」

     

    近畿大学アカデミックシアターDONDENのLEGENDにはまだまだ少女漫画とか、『AKIRA』もいるわけですが、堀江さんがどんな記事を仕上げてくるのか、毎回楽しみです。方向性はかなり違いますが、同じDUSTの土俵でシーザーと愉快なキソイを繰り広げてほしい。

     

    • マツコ:44[守]ドラミ助太刀教室・稲垣景子さんのミメロギア作品、「絹なオムレツ・綿なチャーハン」をクッキングしたんですよね。方法を方法でお返しした師範魂がすごい!

     

     

     

    • マエストロ上杉’s Choice! 
    •       ─ 応援ファンファーレでPick!

     

     

    編集ビタミンが利くぜ!寺田充宏のエディット檸檬ツアー

    3月10日のエディットツアーレポートです。講師はリアル編集レクチャーの名手、寺田充宏師範。新たな“リアルコーチ育成講座”の立ち上げのリーダー的存在でもあります。当日の様子の一部は、オンライン・エディットツアー予告動画で観られます。これは必見!

    •  
    •  
    • マツコ:SNSのアルゴリズムによって、情報がフィルタリングされていることへの危惧。わたしたちのイマジネーションは奪われている?!そして、編集の可能性!寺田師範、いやあ!!深イイですねぇ~。
      そうそう、エディットツアーといえば、「マエストロ上杉、Toy pianoを弾くの図」が、マツコおすすめですよ。眠れない夜の癒しにどうぞ~。

    •  
    •  
    • 後藤’s Choice! 
    •      ─ 波及のインパクトでPick!

     

    3月の波及度で言ったらもちろんコレ!

     

     

    ウイルス三部作をハイペースで書き上げ、その第一部が1737夜『ウイルス・プラネット』で松岡校長によりお奨めされるとView数も急上昇。

    4月8日時点で累計1500views以上を叩き出し、あの他の追随を許さない3700views超え「松岡正剛が語る、2020年に突出するための五箇条 」に次いで、2位に踊り出ました。イラストもいつもより多めに、ウイルス・システムを病理医の知見と編集工学的視点を持って解説しています。千夜千冊からの記念すべき初ブリッジです。

     

    •  
    • 川野’s Choice! 
    •      ─ 流麗な文章表現でPick!

     

     

    比叡おろしの書き下ろし。この原稿は、進行中の感門之盟と同時に綴ったものなんです。併走・密着の熱を感じさせつつ、この記事の締めくくりは、

     

     「ある学衆はそう吐露し、やっぱり「ちょこっとお顔を見たいので」と、家を出た。

     いま、ふりしきる雪のなか、本楼に向かっている。」

     

     と余韻を残してくる。書き手の福田容子さんはプロのライターでもいらっしゃいます。速報性を重視しつつ、こういう構成の工夫に余裕を感じさせますね。

     

     

    マツコ:3月は、福田容子師範がついにEdistライターとしてデビューとなりました♪ 感門之盟もオンライン・オフラインのハイブリッド型で初開催。学林局(イシス編集学校 事務局)は、不測の事態にどう編集的にアプローチするか、そのクリエイティビティが日々試されているかのような3月でした。そんな中、林頭のチョイスは、、、

     

    みなさんのオシは、見つかりましたか?

     

    以上、2020年3月の編集部おすすめ記事をお届けしました。

     

    この4月からは、[多読ジム] と連動したEdist記事も続々と登場予定。新たなEdistライター達が、ここで言葉を繰り広げてまいります。見逃せないぞ、遊刊エディスト! 

     

    またどうぞお楽しみに~

     

     

    (Comments by マツコ@編集部 )

     

     

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    https://edist.ne.jp/list/edist-recommend-202004/feed/ 0 7121